「アンタなんかより、私の方がずっと彼を満足させられるわ!」
そう言って私の前で叫ぶ女に思わずため息が零れた。
たかが一度抱かれたことがある、というだけの女に何故ここまで罵られなければならないのか。女の口から飛び出す汚い言葉に思わず眉間にシワが寄る。
ああ、煩わしい。
声を張り上げる女は自分の背後に彼がいることに気付いていないようで、尚も私に罵声を浴びせ続ける。眉間に皺を寄せた彼にああ、このままだとこの女は死ぬなと思いながら目で彼を制す。
ゆっくりと歩いてテーブルに置かれていたグラスを手に取る。女の元へとゆっくり歩き出せば、彼女は少しだけ戸惑って私を睨みつける。
「貴方がどれだけ素敵な女性かは知らないけれど、そんな汚い言葉で相手を罵ることしか出来ないような女、彼はきっとごめんでしょうね」
持っていたグラスを女の頭の上で傾ける。
ぱたぱたと女の髪の毛から滴る水に、彼女は何が起きたのか分からないと言わんばかりの顔で目を瞬かせた。
「悪いけれど、私にもプライドはあるの。貴方みたいな女に負けてあげる気はさらさら無いわ」
そう言って、彼女の目の前でグラスを落とせばパリンと軽い音を立ててグラスが割れる。
徐々に女の顔が憤怒に染まって、またしても大声で怒鳴り始める。ああ、折角助けてあげたのに。これじゃあ、なんの意味もないじゃない。
「ああ、それから。折角私が助けてあげた命、大事にしてね?次は、ないわ」
「フッフッフッ。そんな事言われちゃァ殺せねェじゃねェか、名前チャン?」
「やっぱり殺す気だったのね。相変わらず、手が早くて困っちゃう」
肩を竦めて女の後ろを指差せば、女はゆっくりと振り返って目を見開いた。カタカタと体を震わせて怯える女に目もくれず、彼はまっすぐに私の方へと歩いてくる。
楽しそうに笑って私を抱き上げた彼に態とらしく肩を竦めて見せれば、彼はもう一度笑って私の額にキスを落とした。
そんな私達を呆然と見上げる女に勝ち誇ったような笑みを浮かべて見せれば、女は悔しそうに顔を歪める。
「残念ね。彼は、貴方より私の方が好きみたい。死にたくないなら、さっさと帰ってくれる?」
彼の首に腕を回して見せつけるように彼の首筋にキスを落とせば、女は酷く顔を歪めて部屋を飛び出して行く。
バタンと大きな音を立てて閉まった扉にクスクスと笑えば彼が悪い女だなァ、と笑った。
.