花束を君に

「やる」

そう言って渡されたのは小さな花束だった。びっくりして思わず花束とエースを交互に見てしまう。

どうして、とかなんで、とか。聞きたいことは沢山あったけれど、頬を赤くしてそっぽを向く彼が愛おしくて胸がぎゅううっと膨らむ。嬉しくて頬が緩むのを抑えられない。

「エースが、選んでくれたの?」
「…おう」
「嬉しい…ありがとう」
「別に、たまたま通りかかったから買っただけだ」
「ふふ、そっか」

花束を抱きしめて目の前のエースに笑いかければ彼は益々顔を赤くする。

頭の後ろをガリガリと掻いて私と目を合わせようとしない彼に思わず笑みが零れてしまう。

どうしよう、私今、すごい幸せだ。

「ねえ、ぎゅってしていい?」
「ん、」

緩む頬をそのままに首を傾げれば、彼は顔を逸らしたまま腕を広げてくれる。

その腕の中に飛び込めば、背中に彼の腕が回って優しく抱きしめられる。息を吸い込めば肺いっぱいに広がる彼のお日様の様な匂いと、花束の華やかな匂い。

花束を持っているせいで彼の背中に腕を回すことは出来ないけれど、私の愛おしいと思う気持ちが伝わればいいなと、もう一度彼にありがとうと囁いた。

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