※現パロ※
はぁ、と意図せず零れたため息と重い足。何が、とは言わないが積み重なったイライラやモヤモヤした気持ちがずしりと重くのしかかる。
自宅の鍵を開けて部屋に入ればキッチンからふわりといい匂いが漂ってくる。ふらふらと、それに吸い寄せられるようにキッチンに顔を出せば優しく笑ったサンジくんがいた。
「こんな遅い時間までお疲れ様。お腹減ってない?」
ふわりと笑ったサンジくんに私が頷くよりも先にぐう、とお腹の虫が声を上げる。
慌ててお腹に手を当てるけれど、そんな事で静かになってくれる訳もない。恥ずかしさで俯けば、頭をポンと撫でられる。
「手、洗っておいで。ちょっと遅いけど、一緒にご飯食べよう」
魅力的なお誘いにこくりと頷いて手を洗いに洗面所へと向かう。手を洗っている間に、まだかと言わんばかりにお腹の虫がもう一度声を上げた。
二回目はサンジくんに聞かれなくてよかったとホッと胸を撫で下ろす。ふと顔を上げて、鏡に写った自分を見て思わず眉間にシワが寄る。
ああ、折角サンジくんに会えたのに。なんて酷い顔をしているんだろう。
サンジくんに会えたこと、サンジくんのご飯が食べれること。嬉しくなって少しだけ軽くなった心が、また重くなる。サンジくんに心配かけまいと両頬をぱちりと叩いてリビングへと戻る。
「疲れた時は暖かいもん、だろ?」
そう言ってサンジくんが出してくれたのは温野菜のサラダとチーズリゾット。いただきます、と手を合わせてスプーンを口に運ぶ。
飲み込んで、また一口。
それを何度か繰り返していると、ぽたりと零れた涙がテーブルを濡らす。ぽたぽた、と涙が溢れて止まらない。
「誰も取ったりしねぇから、ゆっくり食べな」
優しい声でそう言われて、こくりと頷く。
私が泣いていることには一切触れずに、頭を撫でてくれるサンジくんにまた涙が零れる。
しっかり完食してご馳走様でした、と手を合わせればサンジくんがお粗末様でした、と笑う。
ソファに身を投げるようにしてぼすりと腰を下ろせばマグカップ片手にサンジくんがキッチンから戻ってくる。
「片付けしてくるから、これ飲んで待ってて」
そう言って差し出されたマグカップに入っていたのはホットミルク。一口飲めばふわりと広がる甘みに、また涙が零れた。
涙を拭っては、マグカップに口を付けて、また溢れた涙を拭って。そんなことを繰り返していればふわりと頭を撫でられる。
顔を上げれば私の前にしゃがみ込んだサンジくんの姿。
「名前ちゃんは、いつも頑張ってるよ。誰よりも頑張ってる。評価してくれる人が誰もいなくたって、俺は名前ちゃんの頑張りを知ってるし、認めてる。俺は、頑張り屋さんな名前ちゃんが大好きだから」
静かに、それでいて優しい声で紡がれる言葉に喉がひくりと引き攣る。
堪えきれなかった嗚咽が零れて、涙がぼたぼたと落ちる。するりと手からマグカップが抜き取られて代わりに、大好きなサンジくんの匂いに包まれる。
「辛い事も苦しい事も、全部吐き出していいんだよ。俺が、全部まとめて受け止めてあげるから。名前ちゃんだけが辛くて苦しい思いをしてるなんて、俺には耐えられない。だからさ、その辛さも苦しさも一緒に背負っちゃダメかい?」
ほっぺを両手で包み込んで優しく微笑まれて、堰を切ったように弱音が溢れ出す。
あれが嫌、これが嫌。ああしたい、こうしたい。
子供のように、泣きじゃくりながらぽろぽろ零した弱音を、サンジくんは嫌な顔一つせずに全部受け止めてくれた。
「うん、そうだね。頑張ってるもんな。偉いよ、俺がいつも見てるから。な?」
まるで、私が欲しい言葉を全部知っているかのようなサンジくんにぎゅうぎゅう抱きつけば、同じように抱き締め返してくれる。
泣き疲れてぼんやりしていれば目尻を彼の親指が撫でて、そこに優しくキスが落とされる。
「冷やさねぇと目、腫れちまうな」
ちゅ、ちゅ、と涙を拭うように目尻に何度も口付けられながら優しく頭が撫でられる。
「名前ちゃんがして欲しいことも、やりたいことも、全部俺が叶えるから」
何かに誓うようにそう言って私に優しくキスをしたサンジくんが、私を寝かしつけるように頭を撫でてくる。
お風呂にも入ってないし、着替えてもいない。
それでも疲れきった体では襲い来る睡魔に抗うことなど出来るはずもない。ゆっくりと落ちてくる瞼の隙間から見えたサンジくんは優しい顔をしていて。
おやすみ、と囁いたサンジくんの声を最後に、私の意識はとぷりと眠りの海に沈んだ。
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