サンジくんの誕生日だから、と宴で盛り上がったのはついさっきの話。さっきまで騒いでいた皆は疲れきってもう全員夢の中だ。
舷でタバコをふかして空を見上げる彼の背中が何だか寂しく見えてそっと隣に立てば、彼は少しだけ驚いたように目を見開いてからふにゃりと笑った。
「どうしたの?」
「誕生日、おめでと。サンジくん」
「ありがとう」
首を傾げるサンジくんに笑いかければ、彼はまた嬉しそうに笑う。ふわりと風が流れて鼻をくすぐるのは彼のタバコの匂い。
それに気付いた彼がタバコの火を消して、また空を見上げる。嬉しいと、そう思ってはいるけれど、どこか寂しそうなその横顔に何て声をかけたらいいのか少しだけ躊躇う。
「ねぇ、サンジくん」
「ん?」
「あのね、私サンジくんのことが大好きだよ」
優しくて、かっこよくて、面倒見がよくて。困ってる人を放っておけなくて、お節介で、気遣いもできて、料理も上手。
良い所なんて、挙げたらキリがないくらい沢山ある。けれど、それと同じくらい悪い所だってある。喧嘩早いし、女の子に甘すぎるし、皆の為にって自分の命を差し出すような真似したり。
でも、それでも、そんなサンジくんが私も、皆も大好きなんだよ。
「サンジくんに会えて、本当に良かったって思ってる。サンジくんが生まれてきてくれて、本当に嬉しいの。サンジくんのお母さんにありがとうって言いたいもん。私と、サンジくんを会わせてくれてありがとうって」
海を見つめていると、何となく言葉が溢れてくる。
ぽつり、ぽつりと、私が紡ぐ言葉をサンジくんは何も言わずにじっと聞いている。隣に立つ彼の手を握って、真っ直ぐ彼の目を見つめればゆらりとその瞳が揺れる。
もう一度大好きだよ、と告げれば彼がくしゃりと泣きそうな顔で笑う。
「ありがと、な」
髪の毛で隠れていた瞳から一筋零れた涙には見ないフリをして、彼の首に腕を回す。きゅっと抱きつけば、彼の手が背中に回る。
ぎゅうっと苦しいくらいに抱きしめられて、震える声で彼がありがとう、ともう一度呟いた。
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