両片思いを抱きしめて

私は、サンジくんが好きだ。いつから、とかどこが、と言われても困ってしまうけれど間違いなくこの気持ちが恋であることは分かっている。

けれど、私がどれだけ彼を好きでも、彼は私の事を恋愛対象でなんて見てくれていないのだ。今までナミに抱きつこうとして怒られてしょげたり、ロビンにくっつこうとしてさり気なく躱されて落ち込んだり、私にも抱きつこうとして逃げられたり。

そんなのいつもの事だけど、彼が私達を大切な仲間だと思ってくれているからこそできることなのだ。だから、彼が私達にそうしてスキンシップをとろうとしてくるのは信頼の現れだと。

それでも、私だけにして欲しいと思う心が芽生えてしまうのは仕方がないと思うのだ。

「なら、逃げなきゃいいじゃない」
「へ?」
「なるほど。名案ね、ナミ」
「でっしょ〜!」
「待って!?どういう事!?」

私の悩みにバッサリと答えを出したナミの言っている意味が上手く呑み込めずに首を傾げる。

ナミと同様にロビンまでもが楽しそうに笑うものだからもっと意味がわからない。分かんないよ、と唇を尖らせた私に二人が声を上げて笑って教えてくれたのだが、正直恥ずかしくて出来る気がしなかった。

「いい?サンジくんがアンタに抱きつこうとしてきたら避けないでそのまま抱きつかれておきなさい」

けれど、そう言ったナミの笑顔が怖すぎてできませんだとか、やりませんだなんて言えるはずもない。

幸か不幸かサンジくんが私にハグを求めてくる事はなく、あっという間に夜になる。何となくサンジくんと顔を合わせるのが恥ずかしくて一人甲板で夜風に当たっていれば後ろから足音が聞こえる。

「風邪引いちゃうよ」
「サンジくん…」
「隣、いいかい?」

優しいサンジくんの声にちょっぴり胸がドキドキして、意識すればする程に顔が見れない。

隣に立ったサンジくんを視界から逸らすように何も無い真っ暗な海を見つめる。月明かりが私とサンジくんの影を海に移して、今この瞬間、この場所に二人しかいないような気持ちになって慌てて頭を振る。

熱くなった顔を冷まそうとパタパタと扇いでいれば、急激に体温が下がったせいでふるりと体が震えてくしゅんっ、とくしゃみが零れる。

「大丈夫かい?」
「う、うん…だいじょ、っくしゅん、!」
「ははっ、大丈夫じゃなさそうだな。じゃあ…俺があっためてあげようか?なーんて…」
「っ、あの…じゃあ、お願いして、いい…ですか…?」
「へ!?」

思っていたよりも体が冷えていたことに気が付いて腕をさすればサンジくんの心配そうな瞳が私を捉える。続けて出たくしゃみにサンジくんがクスクスと笑って、悪戯そうな顔で腕を広げる。

あ、と思った時にはもう口から零れていた言葉に私だけじゃなくてサンジくんまで驚いたような顔をしていて。

「えっ、あ、いや、その…!」
「ダメだよ。そんなこと言ったら、勘違いしそうになっちまう」
「…っ、勘違い、じゃない…もん…」
「えっ…?あー……、〜っ、マジ、か…」

慌てて誤魔化そうとしたけれどサンジくんが眉を下げて悲しそうに笑うから、咄嗟に服の裾を掴んで言葉を紡ぐ。

ぶわりと顔が熱くなったのが分かって俯けば、頭上から聞こえてくる少しだけ戸惑ったような声。

あぁ、ほら、やっぱり言わなきゃよかった。恥ずかしさと後悔で涙が滲んで、ぐっと唇を噛み締める。

「ほんとに、自惚れていいのかい?」
「っ、それ…って…」
「あー、いや…今は、顔見ないでくれると嬉しいんだけど…」
「うぇ、!?え、あっ、ごめ…っ」

溢れそうになる涙を必死に堪えていればサンジくんの手が頭を撫でるから、反射的に顔をあげれば口元を手で覆って顔を真っ赤にしたサンジくんが立っていて。

ポカンとしてその顔を見つめればサンジくんが顔を逸らして私の腕を引く。ぽすり、とサンジくんの腕の中に閉じ込められてドキドキと聞こえてしまいそうな心臓の音にぎゅっと目を閉じた。

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