※トリップネタ※
※『その笑顔が眩しかった』の続き※
ぽろぽろと止まらない涙を必死に拭っていれば、その手を優しく包まれる。真っ直ぐこちらを見るナミの名前を震える声で呼べば、彼女は呆れたように笑った。
「もう、そんなに思い切り擦ったら赤くなっちゃうでしょ」
「なんで…、なんで、可哀想っていわないの。なんで、そんな目するの、なんで…っ」
「ああ、もう。ほら、泣かないの」
優しくこっちを見るナミにぼろぼろと涙が零れて、口からは意味の分からない言葉が紡がれる。
何を言いたいのか、何を言っているのか自分でも分からない。可哀想って言われたい訳じゃない。同情されたい訳じゃない。
でも、そうじゃない反応をされるとどうしたらいいのか分からない。もう、自分がどうしたいのか分からない。
「なに泣いてんだ?名前?」
「わ、わかんな…っ」
「分かんねーのに泣いてんのか?変な奴だなー、名前は」
「だ、って…!いままで、そんなっ、こと…っ、いうひと、いなかった、から…っ」
皆、私を見て可哀想だと言っていた。
向けられる視線も、かけられる言葉も、全部、不快だった。家族も、周りの人も、皆が私を、私自身を見てくれなかった。
だから、逃げるように海に飛び込んだ。楽になりたかったんだ。惨めになりたくなかった、なんて綺麗な理由を並べたけれど結局は逃げただけだったんだ。
「わたし、っ…どうしたら、いいのか…っ、わかんな…いっ、!」
「そんなの俺が知る訳ねぇだろ」
「っ、」
「名前がやりてぇ事も欲しいモンも名前にしか分かんねぇよ」
ひゅっ、と喉が鳴って息が詰まる。
やりたい事、欲しいもの。そんなの、考えたこともなかった。だって、考えても絶対に手に入らないって、分かってたから。
「知ってるか?欲しいモンも、やりてぇ事も言わなきゃ手に入んねーんだ」
「そんな、の…だって、いったって…!むだだもん…!いままでもずっとそうだった…っ!ひとりに、なりたくなかった、のに…っ!ひとりぼっちだった、!ともだちも、っかぞく、もっ、ほしかったのに、できなかった!」
これ以上、絶望したくない。もう、悲しい想いをしたくない。だから、死を選んだんだ。
ボロボロと涙を流して叫ぶ私を麦わら帽子の彼は真っ直ぐに見ていた。何もかもを見透かすようなその目が、今は、怖かった。
ぎゅっと手を握りしめて俯いた私の頬を大きな手が包んで、無理やり顔が上げられる。
「無駄だって誰が決めたんだよ!名前と友達になりたいとか、家族になりたいとか、決めるのは名前だけじゃねぇ!名前がなりたいって言わなきゃ、皆いなくなるに決まってんだろ!」
「…っ、じゃあ…!どうしたら、いいのよ…っ!むこうでも、こっちでも…っ、ひとりぼっちなのに…!だれに、っ」
「お前なあ、さっき言っただろ。独りじゃねえって」
ぎゅっと握りしめた拳を彼にぶつけるけれど、彼はびくともしない。ぷつりと小さな音がして、握りしめた拳から微かに血が流れる。
ぼたぼたと涙を流す私を、呆れたような顔で見た彼が笑う。
「俺達がいる」
その言葉にぐうっと喉が押し潰された。嗚咽が零れて、胸が苦しい。それなのに、どこか満たされたような気がして重たい何かがなくなった気がした。
声を上げて泣きじゃくる私に彼は、ほんっとお前は泣き虫だなと笑って私の背中をバシバシと叩く。
ぺたりと甲板に座り込んだまま、必死に涙を拭っていればその手が優しく包まれた。
「さっきも言ったのに、もう忘れたの?」
「な、み…」
「擦ったら赤くなっちゃうでしょ。それから…私はとっくに名前と友達になったつもりだったんだけど、違ったのかしら?」
「〜っ、なみぃぃぃいい」
ニヤリと悪戯っ子のように笑って、綺麗な指先で私の涙を拭ったナミにまた涙が零れた。
呆れた様に笑って私を抱きしめたナミがぽんぽんと背中を叩いてくれる。初めての暖かさに気恥しさと嬉しさが混ざって、また涙が溢れた。
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