彼の背中を追いかけた

※BAD END※

彼のお墓がある場所の、すぐ横に小さなおうちを建ててもらった。モビーの船大工さんたちに。そして、私はそこで一人で暮らすことを決めた。

でも、お兄ちゃん達は反対した。きっと末っ子の妹が心配だから。でも、私はどうしてもここにいたかった。

「平気。エースから離れたくないの」

そう言って言って頑なに譲らない私にお兄ちゃん達は定期的にでんでん虫で連絡入れることを条件にそこで一人で暮らすことを認めてくれた。

ひっそり暮らし始めて、彼のお墓に行った。墓石に寄りかかって本を読んだり、彼に話しかけたりして、時間を過ごした。でも、心は満たされなくて。

「エース、私やっぱりダメだぁ…もう、むりだよ…っ」

必死に涙を堪えながらお墓の前で零れた私の弱い心。お兄ちゃん達と電話する時は「元気だよ」って笑って返してた。

でも、本当はもう心から笑えない。ご飯だって全然喉を通らない。体も心も限界だった。

「えーす…っ!あいたいよ…!」

ある日ポロッと涙が零れた。一度零れた涙はもう止まってくれなかった。ボロボロ零れる涙と嗚咽が苦しい。

「ぅ、あ…!えー、っす…!え、ーす!ぁう、あ…!」

泣き崩れた私は、そのままお墓にもたれかかる。

「このまま、ここにいたら、エースのとこに行けるかなあ」

なんて思いながらぼんやり空を見てたら、すっと視界が暗くなって意識がとぷりと沈んでいった。

ああ、そう言えば今日の夜はお兄ちゃんに電話する日だった。きっと、心配かけちゃうなあ。

そんな事を思っていると、不意に視界が開けて明るくなった。目を開ければ辺り一面は綺麗なお花畑。

「ここ、どこ…?」

お花畑の真ん中にぺたりと座り込んで、ぽつりと呟くと後ろからザッと足音が聞こえた。振り返ろうとしたその瞬間。

「ったく、来るの早すぎだっつーの。来んなって言っただろ?」

ずっと聞きたくてたまらなかった彼の声がした。恐る恐る振り返ると呆れた顔して笑うエースが立っていた。信じられなくて「えー、す?」って声をかける。

「何だよ、そんな驚いた顔して」

ぶはっと吹き出すように彼が笑うから「えーす、?」って手を伸ばした。彼がその手がぎゅっと握って「ん?どーした?」って首を傾げるから。

「えーす、えーす…!えーすっ!」

子供みたいに何度も何度も名前を呼んで、ボロボロ涙を流す私を彼は抱き上げて笑った。

「ほんっと、お前は泣き虫だな」
「えーすっ!ばか、!ばかぁ…!えーす、っ、の、ばかぁ!」

彼の首に手を回してしがみついて、わんわん声を上げて泣いた。

「ん、ごめんな。一人にして」
「ぅあ…っ!ばか…!ばかぁ!ひっく、うぇ、ぇっ…!」

きっと、泣きすぎて私が何言ってるかなんて彼は分かんないはずなのに。暖かくて、大きな手で頭を、背中を撫でてくれた。

「ん、ごめんな。もう、一人にしねぇから。ずっと一緒だから。な?」
「うん…!うんっ…!」

泣きすぎて、真っ赤に腫れた目を彼は親指でゆるりと撫でてからちゅ、と口付ける。瞼、鼻、頬と口付けられて、最後は唇。

彼の体温が愛おしくて、何にも変え難くて。何度も繰り返される口付けは、涙の味がした。

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