思い出の場所で再会させてあげよう

「みいつけたあ」

ゆるりと上がった口角に男がハッと目を見開いた。200年前と姿の変わらない男は犬神の一族だった。呪詛の類を得意分野とする一族で、性格は極めて強欲だった。己の欲の為なら手段を選ばず呪詛を用いて多くの人間を殺してきた有名と言えば有名な妖だ。

そんな妖が私の前で立ち尽くし、ギラギラと燃える目で私を見つめる。わなわなと震える唇は私への怒りからくるものだろうか。ニコリと微笑んで再会を喜ぶ私に対して、男はぶわりとその毛を逆立てた。どうやらゆっくり落ち着いて話をする気はないらしい。

「お前だけか?」
「まさか!皆いるよ。久しぶりに会えるって言ったら全員行くって聞かなくってね」
「あの日から、一日だってお前らを忘れたことはねえ!お前らに、俺の一族は滅ぼされたんだ!」

予想通りの理由で吠える男が一際大きな声で遠吠えをした。途端に空気が重くなって、周囲が騒がしくなる。やっぱり、場所をここにして正解だった。沢山の足音と、荒い息遣い。張り巡らせた糸に触れる複数の獣の感覚。やっぱり、200年も経てば仲間も増えている。

「ここがどこだか、アンタなら分かってるよね」

クスクスと笑いながら尋ねた私に男が目を瞬かせた。ああ、可哀想に。私達への恨みだけで生きてきたから知らないんだろう。ここが、どんな場所なのかを。

「ふはっ、今頃お前の昔の仲間達が泣いてるんじゃねえか?」
「元気そうじゃねえか、化け狐」
「お山のワンチャンには高貴な狐もその辺の狐も大して変わらねえってか?」

ふわりと尾を揺らして木から降りてきた花宮に男が笑う。九尾の妖狐を相手にして化け狐なんて、本気で馬鹿なのか強がっているだけなのか分からない。そんな男の精一杯の挑発を鼻で笑った花宮が辺り一面を炎で取り囲む。九尾の青い炎はあの日と同じだ。

そして、その日が風に乗って高く伸びる。その風を起こした張本人は木の上で器用に目を閉じている。風に乗って聞こえてくるのは、先程まで騒がしかった獣たちの苦痛の声。勿論、目の前の男には聞こえていないが、烏天狗の瀬戸にとってはこの程度は朝飯前だ。風を操り炎の壁を作り、離れた場所の音を拾い、私達の声を風に乗せて遠くまで届けてくれる。

辺り一面の青い炎と、いつまで経ってもやってこない仲間達に男の表情が曇りだす。

「なんでアイツらが来ないんだろうって、思ってる?」
「どういうことだ…!」
「それより答え合わせと行こうぜ?なあ?」

先程の問いに、男は答えられなかった。私達が折角この場所を選んであげたというのに、全く気付かない男にやれやれと肩を竦めてため息を吐く。貴方の大事な家族が、200年前殺された場所だと言うのに、気付かないなんてね。
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