嫉妬が呪いになることを

「いやマジでごめんって」
「一人で何とかして来いよ、連れてくんじゃねえ」

最近何となく違和感はあった。何か面倒ごとに巻き込まれているような感覚はあったが、こんなに早く巻き込まれるとは思ってなかった。ごめんごめん、と手を合わせてへらりと笑った原の腕についた呪いの印。話を聞けば適当に引っかけた女が蛟だったらしく、所有印を拒んだ結果がこの呪いの印だと言う。正直そのまま死ねばいいと思う。前々からコイツの女癖の悪さについては呆れていたがここまでくると、もう心底どうでもいい。

「蛟の呪いの印なんて初めて見た」
「いやこれ結構痛いんだよね」
「どんくらい持つの?これ」
「三日くらいじゃない?見た感じだけど」
「じゃあ一週間後に動くか」
「え?何で?」

腕に巻き付くようにしてついた印を指でなぞれば珍しく原が痛みで顔を歪める。良いものを見たと笑みが零れて、それに気づいた原が嫌そうな顔をする。分かってんじゃん。こういう時はここぞと言わんばかりに遊ばせていただきますけれども何か?

想像よりもずっと呪いの進みが早く三日でコイツの顔も見納めか、と鼻で笑えば後頭部を叩かれる。おい、原。態度デカいな。マジで死なすぞ。

「んじゃ、私の印付けてあげよっか」
「うっわマジかよ最悪」
「いいんじゃねえの。ま、標的お前になるけどな」
「釣れればいいんでしょ?じゃあ方法は何でもよくない?」

しょうがないなあと立ち上がった私に花宮がニヤリと笑う。お前の印痛いから嫌いなんだよ、と不満の声を上げる原だが方法がそれしかないことを誰よりも分かっているからこそ渋々頷く。

前にも話したが、妖には印というものがある。基本的には良い意味で利用される印だが、今回のように悪い意味で利用される印もある。印は付けられる側の意思によって付き方が左右されるが、呪いの印については付けられる側の意思は関係ない。しかし、その強さ故に呪いの印を付けられた相手は数日で命を落とす為、脅し程度で使用することが多いのだが蛟の付けた印は確実に原を殺すための印だ。

ここまで強力だと、印を付けた側の蛟にも何かしら影響があることは間違いない。呪いの印は相手を自分の元に縛り付ける為の印である為、蛟の印が付いた原に何かが起きれば蛟はすぐに気付く。それを利用する為に、私が蛟の印の上から印を重ねようかと提案したのだ。私が蛟の印の上から自分の印を付ければ、自分の所有物を横取りされるようなもの。阻止する為に私の前に姿を現すはずだ。

「ただでさえお前の印痛いのに、重ねるとか俺死ぬんじゃない?」
「大丈夫よ。死ぬほど痛いけど死なないから」
「何で愉しそうなんだよ、マジ最悪」

ニコリと笑った私に原が表情を歪める。するりと指を動かして私の印を重ねればぶわりと空気が重たくなったのが分かった。

ALICE+