それについては絶対の信頼がある

「ま、じでさいあく…ぅえっ…」
「久しぶりに弱ってる原見たな」
「あは、すっごい良い気分。痛そうだね、一哉ぁ」
「ふざけんなしね…」

私の印を重ねた瞬間、ふらりと倒れた原が痛みと熱に呻く。ぐったりとする姿に可哀想なんて一ミリも思わないし、正直愉しい。すごく。頬を伝う汗と荒い呼吸が原の苦しさを物語るようでにんまりと口角が上がった。

「つーか呪いの印重ねるとか、お前もやべぇんじゃねーの?」
「ん?だって蛟相手じゃ私の方が格上だし?そこまで強力な印付けてないもん」

呪いの印は当然ながら付ける側も代償を支払わなければならない。そして支払う代償は様々だ。私が原に付けた呪いの印は一番軽いもの。私としては多少の倦怠感くらいで大したことは無いが、体内で二種類の呪いの印が交わってる原からすれば地獄のように辛いと思う。ウケる。

ぜえぜえと荒い呼吸を繰り返す原をつついて遊んでいれば、一段と空気が重くなって足元が濡れ始める。扉の向こうから感じる思い空気と近づいてくる妖の気配に舌なめずりをした。乱暴に開かれた扉の向こうに立っていたのは恐ろしい顔をした女の姿。びっしょりと濡れた髪の毛と、スカートの裾から見える足に付いた鱗。蛟様のお出ましだ。

「おまえが、おまえが…!」
「超キレてるじゃん」
「今んとこ葉月の立ち位置、泥棒猫だよ」
「猫じゃなくて蜘蛛ですけど」
「そういう話じゃないと思うが」

蛟の怒りに合わせてぶわりと髪の毛が逆立つ交わった視線から明確に伝わってくる殺意。挑発するようにぐったりとする原を蜘蛛の巣に吊るしてニヤリと笑って見せる。蛟から見れば、何人も男を侍らせたろくでもない女に自分の愛しい人が奪われたように映るだろう。

「欲しけりゃ奪ってみなよ」
「返せ返せ返せ!!私が、一番だって、私が好きだって、言ってくれたのよ!!さっさと離れなさいよ!!」
「お前そんなこと言ったのかよ、そりゃお前が悪いわ」

どこからどこまでが本当の話かは分からないが、原は自分のものだと主張する女に引き気味で原を見ると反論する元気もないのか浅い呼吸を必死に繰り返している。女の話が本当ならそのまま死んだらいいんじゃないかと全員が一瞬だけ、本当に一瞬だけ思ったが、案外この男はちゃんとクズなのだ。

「残念だけど、コイツはそんな甘い言葉を吐く男じゃないのよ。寝言は寝てから存分にどうぞ?」

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