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それから幾分もしない内にやってきた諸伏さんは降谷さんから事情を聞いて目を見開いた。私を見て情けなく眉を下げた諸伏さんに思わずふは、と笑ってしまったのは仕方ないだろう。

「大丈夫だった?怪我は?」
「ないですよ。降谷さんが助けてくれたから」
「でも手首、赤くなってる」
「すぐ引きますって。諸伏さん心配しすぎ」

男に掴まれて少しだけ赤くなった手首をそっと撫でて益々眉を下げた諸伏さんにくすくすと笑みが零れる。降谷さんもそうだけど、相変わらず怖いくらい優しい人達だ。

誰かの傷を自分の傷のように思うことが出来る。素敵な事だけど、それがいつか自分の首を絞めることになりやしないかとほんの少しだけ不安になる。ばちりと視界が一瞬だけ弾けて、つきりと頭の奥が痛む。何度か瞬きをすればすっと痛みは引いて、一体何だったのかと首を傾げてしまう。

私の様子が少し違うことに気付いた二人が大丈夫か、と眉を下げるから元気ですよとアピールする為にひらひらと手を振って手首を動かして見せれば降谷さんも諸伏さんも大丈夫ならいいんだけど、と納得して引き下がってくれた。

「今度から迎えに行った方がいいかな」
「え、何で…?」
「だって天野さん、すぐ変な男に捕まるから」
「ええ…言い方…」

駅から歩いて数分のカフェへと向かいながら、至極真面目な顔で迎えに行くと言い始めた諸伏さんに過保護すぎでは?と首を傾げる。さすがにそこまでしなくても…外に出る度に変な人引っ掛けてる訳じゃないし大丈夫だよ心配しすぎだよ…。ほら貴方の幼馴染が変なこと言ってるよ、止めてよと降谷さんへ助けを求めるように視線を向けるけれど私の期待は儚く散った。

「まあ待ち合わせたとしても場所と時間は考えた方がいいかもな」
「ええ…私もう高校生ですよ…?」
「僕達からすればまだまだ子供だろ」
「4歳なんて誤差でしょう」
「たかが4歳、されど4歳、だからなぁ」

冗談でしょう?と引き攣り気味の表情をする私に降谷さんはけろりとした顔で諸伏さんの肩を持つ。こういう時だけそういう幼馴染ムーブやめて。二人で結託されたら私勝てないからやめて。

降谷さんならそこまでしてやらなくてもいいだろ、と止めてくれると思っていたのにそんなことは無かった。嘘でしょ。不満げに眉間に皺を寄せていれば、諸伏さんがそんな私を見てクスクスと笑う。

「なんですか」
「眉間の皺、取れなくなっちゃうよ」
「誰のせいですか」
「俺かな?」

私の眉間に人差し指をぐりぐりして笑う諸伏さんをじとりと睨めばごめんごめんと笑って頭を撫でられる。この人私の頭撫でるの好きだよなあ、と思いながらぼんやり見ていればどうした?と首を傾げられる。なんでもない、と首を横に振って降谷さんを見ればくつくつと喉を鳴らして笑っている。

「なんですか」
「表情豊かだな、君は」
「?そう、ですかね」
「今もよく分かんないって顔に書いてあるぞ」

先程まで諸伏さんに向けていた視線を降谷さんへ向ければ益々楽しそうに笑った降谷さんが私の頬を緩く摘む。上下にむにむにと動かされて、んむ、と情けない声をあげれば降谷さんは何が楽しいのか声を上げて笑う。

「降谷さん、楽しいですか?それ」
「まあまあかな」
「え、」
「あっははは!」

ゼロ楽しそうだな、と笑う諸伏さんは降谷さんの奇行を一切止める気がないようで笑って見ているだけ。なんなの!と頬を膨らませて二人の手から逃げるように身を捩れば、二人は顔を見合せてから声を上げて笑った。

んもう!ほんとになんなの!
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