念願のブックカフェはオープンしてから少し日が経っている事もあって、ほどよく賑わっているといった具合だろうか。今どきの男子大学生といった感じの男の子に案内されて一番奥のボックス席へと通される。
メニューを見ることなくブラックコーヒーを選んだ降谷さんと諸伏さんからメニューを受け取り、おすすめ!と可愛らしいポップの貼られたカフェラテを選ぶ。運ばれてきたカフェラテは可愛らしい猫の絵が書かれており、ふにゃりと頬が緩んだ。
「かわいい、」
「ほんとだ。いいね、猫」
「まあ、崩すんですけどね」
「勿体ないとかそういうのはないんだな」
「ないですよ。だって絵だし」
可愛いとは思うけれど、たかがラテアートだ。可愛い、素敵、と思わせることで美味しい、また来たいと思わせる、言わば店側の作戦だと勝手に思っているから勿体なくて飲めないということは別にない。一切の躊躇なくスプーンで猫の絵を崩した私に二人は楽しそうに笑ってカップを傾ける。
「ん、美味いな」
「ほんとだ。結構美味しい」
「よく飲めますね。こんな熱いの」
「そう言えば猫舌だったな」
猫舌が故にくるくるとカップの中身をかき混ぜてるだけの私を見て降谷さんが笑う。ふーふー、と息をふきかけてカップに口を付けるけれど間違いなく熱いことが分かってすぐに口を離した。絶対火傷する。
「あち、」
「ちゃんと冷まさないからそうなるんだろ」
「うー…べろいたい…」
「氷いるか?」
「いる…」
いけそう、と思って一口飲んで後悔した。熱かった。すごく。ぺろりと舌を出して空気に触れさせて冷ますけれど舌はピリピリと痛む。氷の入った水のグラスを差し出してくれる諸伏さんからグラスを受け取って氷を口に含む。
からころと口の中で氷を転がせば、少し痛みが引いたような気がしてくる。ほんとに効いているのかどうかは分からないけれど、気持ちの問題だ。あと冷たくて気持ちいい。そして氷がうまい。
「熱いの苦手ならアイスにすればいいだろ」
「分かってませんね。ホットだからいいんですよ」
「そういうものか」
「そういうものです」
きょとんと首を傾げる降谷さんにチッチッチッと人差し指を振ってみせる。違うんですよ。アイスコーヒーにはアイスコーヒーの良さがあるし、ホツトコーヒーにはホットコーヒーの美味しさがあるんです。そして今日はホットラテの気分だったんです。
まあ熱くて飲めないんですけど、とカップの中身を一生懸命に冷やして何度か口に含んでみるけれど全然熱くて、私がようやく飲めるようになった時には二人のカップは空になっていた。熱いとかそういうのを感じる部分が壊れてんのかなぁ…この人たち…。