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ぐっと胸が痛くなって、私の表情が歪んだことに二人はすぐに気が付いた。手を引かれるままにいつものカフェへと入り、奥のボックス席へと座る。

「何か、気に触ることを言ったのなら謝る」
「ちが…っ、そういうのじゃ…!」

コーヒーの入ったカップを静かに置いて、私を見つめた降谷さんにパッと顔を上げた。そんなんじゃない、降谷さん達は悪くない。私が色々変なことを考えすぎてるだけなんだ。そう思っても上手く言葉が出てこない。何度か口を開いては閉じて、それからぎゅっと拳を握りしめた。

「どんな顔して、二人に合ったらいいのか、分からなかったんです」

ぽつり、小さく呟いた言葉に二人は首を傾げた。ぽつ、ぽつ、ぽつ、と降り始めた雨が勢いよく降ってくるように、言葉が溢れ出す。けれどそれは、支離滅裂で私自身何を言っているのか分からないほどで。

幼い頃に両親が死んだこと、それから親戚の家をたらい回しになってたこと、今の親戚に引き取られてから厄介者扱いをされて、一人で住んでいること。

二人に優しくされて、甘やかされる度に、友人に抱く感情より大きくて重い感情が芽生えてしまったこと。このままだと二人がいないとダメになってしまいそうで怖かったこと。考えれば考えるほど、二人に合った時にどんな顔をしたらいいのか分からなくて避けてしまったこと。

そして、何よりも。

「ふたりに、きらわれたくなかった」

言葉にした途端、私の中でふらふらしていた思いがすとんと落ちるべき場所に落ちたのが分かった。そっか、私、二人に嫌われたくなかったんだ。あれこれと色々考えたけど、全部、全部そこに繋がるんだ。優しくて、ちょっぴり意地悪な二人が大好きで、嫌われたくなくて、ずっと一緒にいたかった。

色んな理屈を並べたりしたけれど、全部私が自分の本当の気持ちから逃げてただけだった。自覚した途端、ぽたりと涙が零れた。ぼろぼろと溢れ出した涙は拭っても拭っても止まらない。しゃくりあげるようにして泣きじゃくりながら必死に言葉を紡ぐ。

沈黙が怖かった。彼らに話す隙を与えて、もうお前とは会わないだとかそんな奴だと思わなかっただとか、面倒だとか。彼らがそんなことを言うはずないと分かってるのに、もしもを考えると怖くて怖くて堪らなかった。小さい子供のように泣きじゃくってごめんなさいと嫌だ、を繰り返す。

「咲桜」
「やだ、!やだぁ…!」
「あんまり強く擦るな。赤くなるだろ」
「ふ…っ、ゃ、だ…めんどくさくて、ごめんなさいっ…やだ、きらいにならないで…っ」

溢れる涙を拭おうと必死に手を動かしていれば、その手を掴むのは褐色の大きな手。降谷さんの静かな声にびくりと肩が跳ねて、子供のようにいやいやと首を横に振る。大きな手が私の頬を撫でて、親指で目尻の涙を拭われる。

「嫌いになんかならないよ」
「ほんっ、と…?」
「俺もゼロも面倒だなんて思ってないし、嫌いにもなってないよ。大丈夫」

ひっくひっくとしゃくりあげて泣く私に二人はふわりと笑って頭を撫でる。少しずつ呼吸か落ち着いて、涙が止まった代わりにぐすぐすと鼻が鳴る。泣きすぎて腫れた目と、ぼんやりする頭で二人を見れば二人はけらけらと声を上げて笑った。

「僕達は嫌いな奴に構うほど優しい人間じゃないよ」
「だって、こんなめんどくさいの、わたしだったらきらいになる…っ、」
「咲桜は、俺達が咲桜に嫌われたくないって思って色々考え込んでたら嫌いになる?」
「ならっ、ない…!ならないっ、!」
「だろ?俺達も一緒」

隣に腰掛けた降谷さんに大丈夫、と繰り返して小さな子供をあやすように背中を撫でられて意識が微睡む。駄々を捏ねて泣くだけ泣いて、挙句の果てには泣き疲れて寝てしまうなんて、これじゃあ赤ちゃんじゃないか。そう思いながらも、目を開けていられない。

目が覚めて、全部嘘だったらどうしよう。じわりと滲む涙と不安になる気持ちで、縋るように降谷さんの服の裾を握りしめる。どこにも、行かないで。ひとりにしないで。眠りに落ちる直前、何かが聞こえたような気がしたけれどそれを確かめる術はなかった。
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