「体育祭?」
「うん。来月?あるんだって」
「へぇ、咲桜も何か出るのか?」
「障害物競走?」
だった気がする、とマグカップを傾けた私に二人が苦笑いをする。興味無さそうだな、と笑った零くんはきっと学生時代ばりばり動ける体育会系だったんだろうなと予想がつく。勿論ヒロくんもだ。絶対この二人運動得意そうだもん。
「体を動かすのは好きなんだけど、体育祭は好きじゃないんだよね」
「あ、運動は好きなんだ?」
「んむ、すき」
新作のケーキを試食して欲しいとマスターから頂いたふわふわのオレンジケーキを食べながらヒロくんの質問に首を振る。運動は好きです。体育の授業も普通に好きだし、バッセンとかも行ってみたい。
「でも体育祭は嫌いなのか」
「だって結局ああいうのって周りとの親睦を深めましょうっていうのが目的じゃん?」
「ああ、咲桜は友達いないもんな」
「零くん言い方」
「はは、ごめんごめん」
正直、クラスでも一人ポツンとご飯を食べていたり誰かと一緒にいる訳じゃなくただ本を読んでいるだけの私に友人と呼べる友人はいない。つまり、学校のイベントなんてクソ喰らえだ。正直運動ができるできない好き嫌いは置いておいて、学校側のイベントにかこつけて協調性が、とか皆と仲良く、とかそういうのを押し付けてくるのが嫌いなんだ。昔から。
物心ついた時には両親が死んで、普通の人とは異なる環境で育っていたが為に周りの子供達より現実を見るのが早かったんだ。というか子供らしくしている余裕も無かったから。まあだからと言って今更友達を作ろう!と思うこともないし、ぶっちゃけヒロくんと零くんがいてくれるからそれでいいかな、って思ってるんだよね。
「まあ咲桜がいいなら何でもいいけどさ」
「でも誰とも一切関わりを持たないってのは何かあった時に困るから、外面だけは良くしておけよ」
「手駒は多い方がいいよねって話?」
「咲桜言い方」
「ごめんなちゃい」
ビシ、とヒロくんに額を弾かれるけれど全然痛くない。クスクスと楽しそうに笑ってくしゃりと私の頭を撫でるヒロくんに肩を竦めて謝る。だってだってそういう意味にしか聞こえなかったんだもの。つまりは何かあった時に自分のことを助けてくれる、あるいは庇ってくれる人を増やしておけって事でしょう?さすが零くん強かだ。世渡り上手ってやつですね。
「外面良くかぁ…できるかな」
「できるだろ。咲桜可愛いし」
「ぴっ!?」
「ふっ、あっははは!なんだ今の声!」
「れ、零くんが変な事言うからでは…?」
愛想が良いとか、愛嬌があるとか。外面の良さに関連する項目についてはチェック付かなくない?と首を傾げていればキョトンとした顔で零くんが爆弾を落とす。な、何ですか急に…。驚きすぎて喉が引き攣るような不思議な声が出て、その声に零くんが声を上げて笑う。ヒロくんは肩震わせてぴるぴる震えて笑ってる。ちょっとあんまり笑われると恥ずかしくなってくるから辞めてよう。
「いいんじゃないか…?ふっ、外面は良くても困ることないし…っふふ、」
「ヒロくん笑いすぎ」
ちなみにこの後ヒロくんの笑いは暫く収まってくれなかった。私の顔見てふは、って俯いて笑うの。ごめん、と謝るけれどぴるぴる震える肩と声が隠しきれてなくて半ば不貞腐れていたらお持ち帰り用の紅茶パックを買ってくれたので許した。しかもちょっと高いやつ。