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「何が綺麗な目だよ…思いっきりナンパじゃん…」

ちょっとお高めのバラの入浴剤は入っている時こそ香りはキツいが、お風呂からあがってしまえばふわりと緩く香るお気に入りのものだった。乳白色になったお湯の中で膝を抱えて項垂れる。

確かに、確かに綺麗な顔だった。綺麗なブロンドと青い瞳。整った顔立ちとすらりと高い身長に、綺麗な声。だからって、あんな真正面切って綺麗だなんて普通言わない。見惚れました、と言わんばかりの私の言葉に猫目の彼こと諸伏さんはお腹を抱えて笑っていたし、金髪の彼こと降谷さんは拗ねたような顔でそっぽを向いていた。

あの後、一頻り笑った諸伏さんが最寄りまで送ろうか、と提案をしてくれた。勿論一度は断ったのだが、また同じように被害に合わないとも限らない。そう思ったのが表情に出ていたのだろう。呆れたように笑った降谷さんに「怖いなら、素直に怖いって言えばいいだろう」と言われ、二人に守られるようにして電車に乗った。

ふわりと鼻をくすぐる甘く爽やかな香りと、込み合う電車内で必然的に近付いた逞しい胸板。大丈夫?とかけられる声の近さにドキドキしないはずもなく、震えそうになる声を必死に耐えて大丈夫ですと返す以外のことは出来なかった。近くの人が手を動かす度に体に力が入って、どくどくと心臓が音を立てる。自分が思っているよりずっと恐怖を感じていることに驚いた。

「大丈夫だよ。誰にも、何もさせないから」

その言葉と、私の頭を撫でた大きな優しい手は瞼の裏に焼き付いている。気をつけて帰ってね、と改札まで送ってくれた二人にお礼をさせて欲しいから連絡先を教えてくれないかと頼み込んだ。自分でもどうしてそんな行動に出たのかは分からない。ただ、そうしなきゃいけない気がした。

気にしなくていいのに、と笑いながら連絡先を教えてくれた二人にもう一度頭を下げて自宅へと帰ってきて冒頭へと戻る訳だ。なんだろう。一日で一週間分のカロリーを摂取したような気分だ。痴漢に遭って、イケメン二人に助けられて、セカンドレイプ紛いの駅員に啖呵を切って、イケメン二人に連絡先を聞いて…あっ、思い返しただけで目眩しそう。

思っていたりもずっと長い時間湯船に浸かっていたこともあってぼんやりする頭でスマホを開き、先程もらったばかりの二人の連絡先へとメッセージを送る。すぐに既読のついた諸伏さんと、暫く未読のままだった降谷さんの対照的な対応にクスクス笑いながらスマホを閉じて髪を乾かした。
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