高校一年生の女の子と大学二年生の男の子、というのは傍から見れば大層素敵に見えるそうだ。
「どう思う?」
「どうって言われてもなあ?」
「え〜?俺は良く羨ましいって言われるけどな」
高校生と仲良しなんて羨まけしからん!というのが萩原さんのお友達の意見らしい。羨ましいがけしからん、という意味らしい。羨ましいはまだ分かるとして、けしからんはよく分かんない。何がけしからんの?と首を傾げると萩原さんと松田さんは顔を見合わせてからまだ知らなくていいんだよ、と私の頭を撫でた。なに!
「で?何でそんな話になったの?」
コーヒーカップを片手に首を傾げた萩原さんに釣られるように一緒に首を傾げれば、なんでだよと松田さんが鼻で笑う。なんでだっけ、と記憶の糸を手繰り寄せる。そうだ、クラスの女の子に大学生の彼氏ができたって話からこの話になったんだ。年上の男の人って素敵よねって話をしていて、くるくる変わる会話はあっという間に別の会話になってしまったけれど、その話は印象に残っていたのだ。
「ふうん。じゃあ咲桜ちゃんも俺達のこと素敵だなって思う?」
「うん。思うよ」
「ほんとかよ…」
「ほんとだよ!なんで疑うの!」
なんっか軽いんだよなあ、と言いながらコーヒカップを傾けた松田さんに心外!と唇を尖らせる。二人のことはずっと素敵だなって思ってるよ。初めて会った時からね。そう言って笑えば、二人はきょとりと目を瞬かせてからくしゃりと破顔して笑った。
「二人が年上だから素敵!とかじゃないから、ちょっと違うかな?」
「お前はそのままでいいよ」
「そうそう。ほんっと可愛いねえ」
「うん?二人共どうしたの?」
しみじみ、という言葉が似合うような様子で言葉を発する二人にまた首を傾げるけれど二人は理由を教えてはくれない。変なの、とつぶやいてカフェオレの入ったグラスに口を付ける。ずず、とわざと音を立ててストローからカフェオレを啜れば萩原さんがこら、と私にチョップを落とす。
「行儀悪いからやめなさい」
「はあい」
萩原さんは意外とこういうとこに厳しい。最初の頃に何度か指摘されて今ではクラスの子達の行動を見て行儀悪いなあ、なんて思ってしまう程になってしまった。つい最近まで自分もやってたのにね。普段は優しくて何でもいいよって笑って許してくれる萩原さんだからこそ、本気で怒ったら松田さんより怖いと思う。まだ怒られたことないけど。
逆に松田さんは普段から口悪いし、何でも直球で言ってくれるから本気で怒っても怖くなかったりするかなあ、とか思ったけど多分そんなことないね。だって松田さんが本気でぐわって怒ったらきっとちょう怖いよ。サングラスかけてるし。
「なんだよ」
「松田さんが本気で怒ったら怖そうだなって思ってた」
「この流れで何でそうなった?」
じいっと松田さんを見ていたら、眉間に皺を寄せた松田さんが首を傾げる。考えていたことを正直に話せば松田さんは訳分かんねぇ、と益々眉間の皺を濃くする。サングラスかけてるから怖そう、と言った私に萩原さんはサングラス効果かぁ、とケラケラ笑っている。松田さんは松田さんでサングラス無くても怖ぇよ、とよく分からない怒り方をしている。サングラスはあれだよ、攻撃力がプラス五みたいなやつだよ、とフォローをするけれど、それはフォローになってねえと呆れられてしまった。なんでだよぅ。
「私もサングラスかけたら強そうに見える?」
「うーんどうだろうね」
「松田さんかーしーてー」
もうどうにでもなれ、と言わんばかりの呆れ顔で渡されたサングラスをかけてどうだ、と二人を見れば微妙な顔で首を横に振られた。そんなばかな。ポーチから鏡を取り出して見てみるけれど、そこまで悪くなくない?
「いや、なんかねお父さんのサングラスかけてる子供って感じ」
「こんなデカいガキがいてたまるか」
「じゃあお兄ちゃん?」
「そういう意味じゃねえよ」
ええ、松田さんめんどくさい。ぶうぶうと唇を尖らせて文句を言えばへいへい、と小さな子供相手にするようにあしらわれてしまい、私は再び頬を膨らませることになるのだ。