大好きな人を大事にして欲しいだけ

雛付き合ってる黒尾のIF。普段から滅多なことじゃ怒らないし何でも笑って許してくれる雛に無意識に甘えてしまっていた黒尾。無茶なスケジュールで仕事を組んでて雛からは「黒尾さんが倒れたら元も子も無いじゃん。やめようよ」って言われてた。

それなのに苛立ってたのもあって「俺は平気だって。あんまり同じこと何回も言わせないで」っていつもよりちょっときつめに言われてしまって「…なに、それ」って雛がショックで言葉を失う。「俺、明日も早いから寝るわ」って寝室に戻った黒尾だったけど自分が苛々してるのをちゃんと分かってて(あ〜〜余裕なさすぎだろ)ってベッドの上で雛にに冷たく当たってしまったことを後悔してる。

ちょっと頭冷やしたらちゃんと謝ろうって思ってたのにそのまま寝ちゃっててハッと気づいた時には日付が変わってて夜中になってる。いつもなら同じベッドの隣で寝てるはずの雛がいなくて寝室を出るけど家の中のどこにもいなくてめちゃくちゃ焦る。スマホを見たら『ちょっと頭冷やしてくる』ってメッセージが入ってて「は…?こんな夜中に…?」って大慌てで上着を持って家を飛び出す。

雛に何度も電話をかけるけど全然つながらなくて「チッ…!クソッ…!」って舌を打つ。思い当たる所に片っ端から行くけどどこにもいなくて頭を抱えてたら孤爪から『起きてる?』ってメッセージが入って、それに返信をせずに電話をする。「研磨か?」「あ、起きてた。ねえ、雛って今一緒にいるよね?」って言われてゾッとする。

「なん、でそんなこと聞くんだよ」って恐る恐る聞いたら「いや、俺配信中でさっきスマホ見たんだけどさ。雛から起きてる?家行っていい?ってメッセージ来てたんだよね。返事したけど返信無いし、電話も出ないからなんかあったのかと思って」って孤爪が言うから益々血の気が引く。

「俺のせいだ」って苦しそうな声で言う黒尾に「どういう事?」って孤爪が首を傾げる。「俺が、アイツのこと突き放したんだよ。寝落ちしてて、起きたら家にいなくて…探してんだけど、どこにもいねえんだよ」って立ってられなくてしゃがみ込んじゃう黒尾の声がどうしようもなく泣きそうで「雛の行きそうな所とかは?」って言われるけど「もう探したっつーの!クッソ…!どうすりゃいいんだよ…!」って苛立ちと不安とで大声を上げてしまう。

黒尾が感情的になってるところなんて見たことが無かったから「クロ…?」って孤爪もびっくり。「そんなに焦るくらい大事なら最初から突き放さなきゃよかったじゃん」って冷静な声で言われてぐうの音も出ない。「雛は絶対自分のこと嫌いにならない、とか思ってたんでしょ」って言われて「…そうだよ。ああそうだよ!思ってたよ!なんか悪いか!」って逆切れ。

自分でも(ダサすぎだろ。図星だからって怒って、開き直って、ほんとダセェ)ってしゃがみ込んで額を押さえて俯いてたら「くろ、おさん…?っ、だから無茶しちゃだめって…!」って家に帰ろうとして戻って来てた雛が道路でしゃがみこむ黒尾を見つけて慌てて駆け寄る。

無茶がたたって具合が悪くなったと思ってるからしゃがみ込む黒尾の肩を抱くようにして隣にしゃがみ込む雛に「雛…?」って黒尾が小さな声で名前を呼ぶ。「こんなとこで何してるんですか。上着も、持ってるだけで着てなかったら意味ないじゃないですか」って困ったように黒尾の手に握りしめられた上着を黒尾の肩にかける雛の手を引いて腕の中に閉じ込める。

「ぉわ…!?」って驚いた声を出す雛の肩に額を押し付けて「っ、ごめん。八つ当たりして、ごめん…!」って震える声で謝ってくる黒尾に勿論雛はびっくりする。「黒尾さん?え、泣いてます?」ってびっくりする雛に「雛が勝手にどっか行くから…!こんな夜中に…!なんかあったらどうすんだ…!」って力いっぱい抱きしめられてぎゅうっと胸が苦しくなる。

「私の心配が出来るなら、自分の心配してください」って泣きそうな雛の声にハッとして顔を上げると今にも泣き出しそうなくらい目に涙を浮かべた雛がいて息を飲む。「なんで、わたしの大好きな人を、大事にしてくれないの」ってぽろぽろ泣かれて胸が痛い。

「ちが…っ、くないよな。ごめん。余裕なくて、八つ当たりとか…ダサいことして、ほんとにごめん。ちゃんと早く帰るし、飯も食う。雛に、もう心配かけないから。だから…許してくれませんか」って頭を下げられて「また、おなじことしたらゆるさないから」って雛が黒尾の腕の中に飛び込む。

そんな雛をぎゅうっと抱きしめて、ハッと我に返ってスマホを見た黒尾がそこで初めてまだ孤爪と電話が繋がってることに気付く。「あ、の…雛さん」ってぎこちなく声をかけてくる黒尾に「?どうしたんですか?」って雛が首を傾げる。

「あの、ですね…俺、雛を探してる時、研磨と電話してたのね」「?うん」「で、電話の途中で雛ちゃんと会った訳よ」「〜〜〜〜ッ!!!」「ごめん」って通話中の文字が表示された画面を黒尾に見せられて「く、くろおさんのばかあああ!!」って雛が真っ赤な顔で蹲る。

「研磨も、悪い」って電話口に向かって黒尾が謝れば心底楽しそうな声で「いいよ別に。面白いもの聞かせてもらったし」って笑われるから「おいおい勘弁してくれよ…」って黒尾も頭を抱える。「でも、サンキューな。研磨」「後でなんか奢ってよね」って孤爪と電話を切って蹲る雛をふわっと抱き上げて黒尾が歩き出す。

「ごめんって」「ゆるさない」「俺だって必死だったのよ」「知らないもんそんなの」「許して下さいよ、雛さん」「やだ!」「家帰ったらちゅーするから」「私がちゅーで機嫌治るとおもったら大間違いだから」「じゃあいらない?」「奪うから、いいもん別に」って頬を膨らませた雛が抱き上げられたまま手を伸ばして黒尾の両頬を包むようにしてちゅっとキスをするから「あ、っぶね…落とすとこだった」ってあまりの衝撃に固まっちゃう。

「家帰ったらすぐ寝るから」ってそっぽ向く雛に「エッこんだけ煽っておいて!?」って黒尾が驚くけどほんとに何もさせて貰えずに家に帰って寝ることになる。その日以来、無茶なスケジュールは組まなくなって休む時はちゃんと休むようになった黒尾がいて、会社の人達からも「最近の黒尾さん調子良いよな」って言われるようになる。


「雛ちゃん、今日は?」「明日早いからダメ」「いっつもそれじゃん」なんてね。

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