雛が烏養とくっ付くIF。卒業式後の春休みに「差し入れ持ってきたぞ〜!」って体育館に現れた雛に日向達が大盛り上がりする。皆がわいわい差し入れのアイスを選んでる中、そそっと烏養の隣に来た雛が「お久しぶりです」って笑って顔を覗き込んでくる。
「折角の春休みなのに遊びに行かなくていいのか」って聞けば「縁下達とこの間旅行してきました!後は大学の入学式まで暇です!」って返ってくるから「何のドヤ顔だよ」って笑っちゃう。「烏養さんは、今年もコーチ続けてくれるんですね」ってふんわり笑ってアイス争奪戦で盛り上がる日向達を見るから「…まあな」って返す。
「暇なんです?」って聞いてくる雛に「暇じゃねーよ」ってデコピンすれば「も〜…冗談なのに…」って額を押さえながらぶうぶう言ってる。唇尖らせて文句を言ってる姿は出会った頃のままで無邪気な子供なのに、日向達を見つめる優しい目は思わずどきっとしてしまうくらい大人びていたから「…俺も、歳とったな」って呟いてしまった烏養にきょとんとした顔をした雛だったけど、すぐにいたずらっ子みたいに笑って「そりゃあ、私も19になりますもん。もう大人ですよ」って言うから「るっせーよ、未成年」ってまた額をびしりと指で弾く。
「もう!バカになったらどうするんですか!」って怒る雛に「バカになった時に考えてやるよ」って適当に返した烏養だったけど「…バカになったら、ほんとに考えてくれるんですか」って小さな声で雛が呟くから「は?どうした急に…」って視線を向けてびっくり。頬を赤く染めて恐る恐るこっちを見上げる雛と目が合って思わず口を噤んでしまう烏養がいる。
何て言おうか迷って口を開きかけたら「なーんて!嘘ですよ!さーて、私はそろそろ帰りますね!」って態とらしく声を上げて体育館を出て行こうとするから反射的に手を伸ばして引き留めようとするんだけど、それよりも先に「えー!?雛さん帰るんですか!?」「練習参加していくんだと思ってました」って日向達にわらわら囲まれて「え〜?今日はしないよ。だって靴持ってきてないもん」「俺の貸します」「王様のが履ける訳ないじゃん。バカなの?」「あ゛!?」「はーいはい!喧嘩しない!また今度来るから!」って楽しそうに話してるから、伸ばしかけた手を引っ込める。
一瞬だけ見えた雛の顔が泣きそうに歪んでいて、それは間違いなく自分のせいだと分かってしまったから、何となくざわざわしてしまって「じゃあ、烏養さん。今日も練習、よろしくお願いします。皆も、またね!」って手を振って体育館を出ていく雛に「……おう」ってしか返せない。
その日から雛の泣きそうな顔が頭から離れなくてもやもやしてしまって「……だぁぁあああ!クッソ!」って頭をがしがし掻きむしってタバコに手を伸ばしてしまう。そんなある日、店番をしてればからからと店の扉が開いて雛が顔を出す。
「あっ、烏養さん…今日、練習お休みなんですね」って雛がすっと自然に視線を逸らして話すからちょっと気になっちゃうけど知らないふりをして「…昨日、練習試合だったからな」って返す。ジュース1本だけ持ってレジに来た雛が「あ、そうそう。私、大学で同好会入ったんですよ」って他愛もない話をしながらカバンから財布を出してお金を出すんだけど、お店に入ってきてからただの一度も目が合わないことに気がついてしまう。
「同じ学年の男の子がいるんですけど、その子がすっごく面白くて」って笑いながら話す雛にモヤモヤだけがどんどん大きくなっていく。「それで、今度一緒に遊びに行こうって話になって…」って話してる雛の手首に思わず手が伸びてガシッと掴むけど「わ…っ、びっくりしたぁ…どうしたんですか?」って言いながら絶対に烏養の方を見ない。
ぎゅうっと手首を掴む手に力を込めれば「い、たいです」って小さな声が聞こえてくるから「ッ悪い…」って手を離す。「もう、どうしたんですか?体調悪いなら早めに休んだ方がいいですよ」って笑いながら「じゃ、ありがとうございました」って頭を下げて雛が店を出ていこうとするから、その背中を追いかけて「ッ、ちょっと…待て…!」って肩を掴んで振り向かせる。
びっくりしたように見開かれた雛の目と視線が交わって(コイツこんな顔してたか…?)って戸惑ってしまう。少しの間、会ってなかっただけなのにあっという間に大人っぽくなった雛の姿に思わず言葉に詰まる。「…引き止めたくせに、何も言わないんですね」って泣きそうな顔をした雛に「ちが…っ、」って反論しようとすれば「大学生になって、大人になれば、振り向いてもらえると思ってたんです。化粧も服も、早く大人になりたくて、頑張って覚えたんです。でも、私の好きな人は、振り向いてくれないから。だから、諦めます」って雛がくしゃりと泣きそうに顔を歪める。
「ごめんなさい。好きになって、ごめんなさい。ちゃんと、諦めるから、きらいにだけはならないで…っ、」ってぽろぽろ泣き出した雛を堪らず抱き締める。一瞬息を飲んだ雛がすぐに腕の中で離れようともがき出して「や、だ…!やだ…!同情なんていらない!はなしてよ、はなして…!」って益々泣きじゃくるから胸が痛い。
「離すかよ」って頭を抱え込むように抱き締めれば雛がひゅっと息を飲んで「なんで、なんで…!」って泣くから「…好きな女が、泣いてんのに離すバカがどこにいんだよ」って抱きしめる手に力を込める。「…は、ぇ…?」って雛が困った声を上げるから「ああああ!クッソ!そうだよ!どうせ俺は教え子に恋愛感情抱くようなろくでもない男だよ!しかもそれを10近く年下の女に気付かされるくらいにはマヌケでダッセェ男だよ!」ってヤケクソで怒鳴る。
腕の中で静かになって何も言わなくなった雛に「…なんか言えよ。俺が恥ずかしいヤツじゃねーか」って小さな声で呟いてそっと体を離せば、ぶわわっと顔を赤くした雛が「…ぁ、やだ…!いま、かおみないで、」ってわたわたして一歩下がるから「なんで」って一歩距離を縮める。
「な、なんでって、やだ…!こないで…!」ってとと、って後ろに下がった雛だったけど壁にとんって背中がぶつかってこれ以上は後ろに下がれなくなる。逃げ道を塞ぐように烏養の手がどんって壁に付けられて囲われるような格好になった雛が「〜〜ッ、や、やだって言ってるじゃん…!」ってひゅんっ、ってしゃがみ込んでそのまま走って店を出ていくから「は!?あっ、ちょ…、はぁ!?早すぎだろ!?」って烏養が驚きながら頭を抱える。
とは言え、惚れた女に惚れたと言ってしまった手前そのままサヨナラは男としてどうかと思う。「…あれは、押せばイケる、か…?」って黙々と次に会った時どう話をしようかと頭を悩ませる烏養と、「な、なになに…!?あ、あんなかっこいいの、しらない…!」って憧れの好きな人に迫られてパニックになって真っ赤な顔でずるずるしゃがみ込んで泣きそうになっちゃう雛がいる。3年の後半には既に烏養に惚れてた雛を知ってるから「たすけて!!!」って送られてきたメッセージに「ぶはっ」って吹き出してしまう2年ズも勿論います。