最後の青春を先の未来でもう一度

卒業式の時にバレー部の部室の前で思い出に浸る雛。西谷に誘われてバレー部に入って、喧嘩をして、仲直りをして、乗り越えて。笑って、泣いて、怒って、怒られて。色んなことが昨日のことのように思い出せてじんわり涙が滲む。

「あ、いたいた。雛ー、皆探して…って泣いてる?」って縁下がやって来て驚かれるから「泣いてません」って返したら「いや泣いてたじゃん。何でそんなバレる嘘吐いてんの」ってけらけら笑われる。「アイツらが雛も入れて写真撮るからって待ってるよ」って腕を引かれて体育館に行く。

「お、来た!おせーぞ!」「どこ行ってたんだよ」って言われて「はあ〜?アンタ達と違っていろいろあるんですぅ〜」って笑いながら返して皆で色んな写真を撮る。笑いすぎてお腹痛くて「あっははは!もう、ほんと、ばかじゃん!」って皆で笑い合うけど残ってる生徒は早く帰りなさいって放送が入って何となく帰らなきゃいけない空気になる。

帰ろうかなと思って立ち上がった瞬間に「最後に皆でバレーしようぜ」って西谷がボール出してきていつもなら怒られるから止めようって言うのに誰も言わなくて自然とバレーが始まる。最初は簡単なパスだったんだけど段々皆ガチになってきてボールの勢いも強くなる。

「ちょっと!?私スカートなんですけど!?」「俺らだって制服だっつーの!」「いや問題そこじゃねぇだろ」「あっぶね、おい田中それガチなやつじゃねーか!」「はっはァ!当たり前だろ!ちゃんと取れ!」ってどったんばったん大騒ぎ。皆で汗かいてぜぇはぁ息切らしながら体育館の床に寝転がって誰からともなく笑い出す。

「あー、もう。髪ぐっしゃぐしゃだし、汗臭いし、もうバカじゃないの」って雛が笑うんだけど、これで最後なんだって思ったら涙が溢れそうになって腕で目元を隠す。皆の顔を見たら絶対に泣く自信があったから、腕で目元を隠して寝転がったまま息を吸って言葉を紡ぐ。

一人一人の名前をゆっくり呼んで「…3年間、ほんとにありがとう。最高に、たのし、かった。やくそく、まもってくれて、ほんとにっ…ありがと…っ、」って後半はもう泣いちゃってぐずぐずになりながら話す。泣くつもりなんて無かったし、笑顔で別れるつもりだった。卒業したからって、すぐに会えなくなるわけじゃない。

だから平気だと思ってたのに、皆と、こうして朝から夜までバカみたいに笑って、はしゃいで、顔を合わせることがこれからは出来ないのだと思うと、「やっぱり、さみしい…っ、」って嗚咽を我慢できずにぐしゃぐしゃに泣きじゃくる雛。

その言葉と姿に、全員我慢なんて出来るはずなくて「おま…ッ、ふ、ざけんなよ…、」「そんな、の、俺らだって…ッ、」って皆じわじわ涙が溢れてくる。皆の声も泣いてることに気付いて体を起こして皆を見たら、全員泣いてて思わずぽかんとしてしまう。

「雛!!!」って西谷に名前を呼ばれて「俺は、お前を誘って良かったって思ってる。お前が、3年間、一緒にいてくれてほんとに良かったと思ってる。ありがとう!!!」って真っ直ぐに見つめられて、もう話すことも出来ないくらい泣く。

「おれも、お前がマネで、ほんとに良かった!ありがとな!」って田中が泣きながら笑って、「おれも、最後までバレー部でいられたのは、雛のお陰だよ。ありがとう」って縁下が頭を撫でてくれる。「俺らの方こそ、3年間ありがとな!最高に楽しかった!」って木下が、「雛がいなかったら、多分もっと早く辞めてたと思うよ。一緒にいてくれて、ありがとう」って成田が、皆が言うからわんわん声上げて泣いちゃう。

バレー部が帰ってないから帰してこいって言われた武田先生も2年ズの姿にもらい泣きしちゃって声掛けられなくて扉の前で立ち止まってるし、体育館が使われてることに気付いた1年ズも2年ズが声上げて泣くなんていう初めて見る光景に驚きつつも一部、もらい泣きしてる人たちもいて。

「よっしゃァ!最後に写真撮ろうぜ!」「何回撮るんだよ!」「もう泣きすぎてぐっしゃぐしゃなんだけど」「まあいいじゃねぇか!青春だろ!」「なんでも青春で片付けようとすんな」ってわいわい言いながら雛のすまほで写真を撮る。全員目元は真っ赤で、制服も髪の毛もぐしゃぐしゃ。でも、3年間で1番イキイキした顔をしていて、皆の宝物になる。

大人になってからも各々見えるところに置いてるし、定期的に会ったりしてたら良いなって、思います。

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