大人になって夜久の試合を見に行った雛。あの頃と変わらない静かで綺麗なフォームと、間違いなくあの頃よりもレベルが上がっているスキルに｢わ、ぁ…｣って感動で空いた口が塞がらない。後で話せたりするかなあと思ってたらちらっとこっちを見た夜久が驚きで二度見。
声は聞こえないけど明らかに｢は！？なんでここに…！？｣って言ってるのが分かって堪らず笑ってしまう。｢来ちゃった！｣って口パクで伝えて手を振ったら自分の頭をぐしゃぐしゃ〜！って掻き回して、それからこっちに向かって人差し指をビシッと向けた夜久が｢見てろよ｣ってニッと笑うから胸がきゅん。
そのまま宣言通り魅せるプレーで会場内を盛り上げた夜久の活躍で無事に試合に勝って｢やったぁ！｣って飛び跳ねて喜んでたら夜久がこっちに向かって走ってくるから雛の周りの女子ファンが悲鳴をあげる。｢雛！！｣って名前を呼ばれるから反射的に｢はい！！｣って返事をして夜久の元へと向かう。
あの頃みたいにわしゃわしゃ〜！って頭を撫でられて｢お前来るなら来るって言えよ！びっくりしただろ！｣って嬉しそうに笑いながら言われて｢だってこんな風に話せると思ってなかったんだもん｣って笑い返したら｢カッコよかったろ？｣ってドヤ顔されるからあの頃と変わらない姿に笑っちゃう。
夜久に会えたら絶対に言おうと決めて練習していたロシア語で『カッコイイ』を表す言葉を告げれば目を見開いた夜久がふにゃっと嬉しそうに笑って｢ははっ、発音下手かよ｣って言うから｢練習したんだよ！｣って返したら｢分かってる。サンキューな｣って頭をまた撫でられる。
｢雛、この後暇か？飯行こうぜ｣って言われるから｢えっ、いいの？チームの人たちとか、｣って言ったら｢いーんだよ。アイツらとは何回も飯行ってるし｣って言われて｢じゃあ、待ってる｣って言ったら｢ん。後で連絡するな｣って微笑まれてまた胸きゅん。
チームの人に呼ばれてじゃあなって駆けて行った夜久を見送って、そこで初めて周りの人達の視線が全部自分に向いていることに気付いて（こ、これまさか…！？スキャンダルとかに、なったりしない！？衛輔くんに迷惑かけちゃう！？）ってパニクりながらも何とか会場を出て夜久と待ち合わせる雛。
面白がって着いてきた夜久のチームメイトにめちゃめちゃロシア語で絡まれて｢…？えっ、なに、？えっ、？｣って混乱する雛を背中に隠して助けてくれる夜久に｢なんて言ってるの？｣って聞いたら｢俺の彼女だと思ってんだよ｣って呆れた顔で言ってくるから（や、やっぱりスキャンダル…！？）って泣きそうになっちゃう。
｢は！？何で泣きそうなんだよ！？どうした！？｣って夜久も大慌て。｢だって、もりすけくん、すきゃんだる…めいわく、かけちゃうじゃん…そんなつもり、なかったのに、｣って不安そうな声で言う雛に｢お前はほんっと昔から自分より選手のことだな｣ってけらけら笑った夜久に頭をがしがし撫でられる。
｢俺は別にアイドルじゃねーし、恋人がいようといなかろうと、全力でバレーするだけだ。俺のバレーの邪魔を雛がするなんて、絶対無いって分かってるよ｣って言われて｢も゛り゛す゛け゛く゛ん゛んんん｣って泣いちゃう。
｢ったく、ほんとにお前は強いくせに泣き虫だな｣って笑った夜久とご飯を食べて観光をして、空港まで送り届けてもらって無事に帰ってきた雛だったけど、こっちのニュースで夜久に結婚秒読みの彼女がいるって大騒ぎになってて背格好とか雰囲気から分かる人には相手が雛だってバレてて他方からどういうこと！？って連絡が来ることになる。