うじうじするの、もう止めます

(Side:雛)

ノヤに手を握られたまま体育館の床に腰を下ろしてぼんやりと先輩達を見つめる。真剣な顔の先輩達は、きっとさっきの放送の内容について話しているんだろう。あの不気味な声が言っていたお助けキャラが私なんだとしたら、さっきの女を私しか見ることが出来なかったのも何となく納得がいく。

「雛」
「ッ、けんま、」
「隣、いい?」
「う、うん…いい、けど…」

ぐるぐると頭の中で色んなことが浮かんでは消えを繰り返す中で、私の名前を呼んだ研磨の声にハッとする。こてん、と首を傾げた研磨の質問に頷けば、私の隣に研磨が腰掛ける。

「あんな焦ってる夜久くん初めて見た。あとクロも」
「あ、はは…みんなに、迷惑、かけちゃった」
「迷惑じゃなくて心配ね。俺も、心配した」
「っ、ごめん…じゃ、なくて、ありがとう…?」
「うん。そっちの方がいいよ。ノヤも、今怖い顔してたよ」
「うそ!?」
「ほんと」

ふっ、と表情を緩めた研磨に釣られるようにふにゃりと頬が緩んだ。何となく、考え方がマイナスになってしまっているのかもしれない。ぱちりと自分の頬を両手で叩いて気合いを入れる。それからぎゅっと自分の手を握りしめて、驚いた顔をするノヤと研磨を見る。

「もううじうじするの止めた!よく分かんないけど、私がうじうじしてても何にも変わんないし開き直る!私が原因なのか何なのか分かんないけど、私のせいだったらごめん!」

そう言ってふんす、と鼻を鳴らした私にきょとんとしてから2人が肩を震わせて笑い始める。怖いものは怖いし、泣いちゃうかもしれないけど、うじうじめそめそはしない。だって不安なのも怖いのも、私だけじゃない。それに、仮に私に何か責任とか、そういうものが降りかかったとしても、それを理由にして皆が私を見捨てるはずがない。私だったら絶対ずっと一緒にいるもん。

「……なんで笑うの」
「ごめん、雛らしいなって思っただけ」
「さすが雛!男前じゃねーか!」
「男じゃないし」
「おいおいカッケェこと言うじゃねーか雛!」
「ちょ、田中重い!邪魔!」
「固いこと言うなって!」
「ねえマジでコケる…ッ、て、わぁッ、!?」

ぐいっと服の袖で滲んだ涙を拭って立ち上がった私に、とうとうノヤと研磨が声を上げて笑う。傍にいて話が聞こえていたらしい田中が笑いながら肩を組んできて、勢いに負けた私がたたらを踏む。支えようとした縁下達を巻き込んで盛大に体育館の床に転がって全員で顔を見合わせて、耐えきれずに吹き出した。

「ぷっ、あっははは!もう、バカじゃん!」
「なにしてんの…」
「おい田中あぶねーだろ!」
「ははっ!悪い悪い!」

呆れながらも笑う研磨に、文句を言う木下と、なんて事なさげに笑う田中。お化けは怖いけど、そんなことよりも、みんながいる事の心強さと安心感の方が大きかった。

「わたし、いま無敵モードだ」
「スター取った?」
「とった!」

ふふ、と笑みを零した私を見て、研磨がふっと笑う。ピースサインを向けてニッと笑った私に研磨も、皆も同じように笑ってくれたから。それだけで、怖いけど私なりにできることを精一杯頑張ろうって思えたんだ。
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