キョン



ワタシがめでたくもSOS団の一員に加わったその次の日の昼休み、ワタシはキョンくんと共に人気の無い屋上にいた。昨日とは打って変わっての快晴であり、日の強い真昼間にこんな屋上に来るのはよほどの物好きだけだろう。4時限目が終わった直後に彼の教室を覗くと、彼は何も言わずについてきてくれた。

「それで、お前は何者だ?異世界人か?それとも幽霊か?」

話を聞くのも面倒くさそうに彼は言ったが、どうやら内心は嫌々でもないらしい。ワタシが「改めまして、異世界人です」と挨拶をすると、昨日3人にしたような話をキョンくんにもして聞かせた。


「なるほどな。やっぱりお前も古泉や長門、朝比奈さんと同じくハルヒにそんな能力があると確信しているわけか」

ワタシがなるべく明るく見えるよう頷くと、彼は腕を組んでこう言った。

「そのお前の能力とやらは本物か?」

この世界の住人なら当然の反応に、ワタシはまたも頷いてみせた。……そういえば、昨日の3人はワタシの能力について証拠の提示を求めなかったな。まぁ、そのうち求められたら披露すればいいか。

「なんならキョンくんの記憶でも覗いてみましょうか?」

彼があまりにも証拠を見せろといわんばかりの表情だったから、ワタシがそう言うと、彼は首を横に振った。

「いや、遠慮しておこう。他人に思い出を覗かれるのなんかまっぴらだ」

案の定の返答にワタシはくすりと笑うと、彼に軽くお辞儀をして、くるりと校舎へ続くドアを向いた。

「それじゃ、貴方も何かあったらよろしく!」

それだけ残して校舎内に入っていった。ドアが閉じる間際、後ろから彼の溜息が聞こえたが、満更嫌そうな感じではなかった。


その日の部活は食材を部室に持ち込んでの宴会となったがその話はまたの機会にでも。宴会の合間に、古泉くんとみくるちゃんから、各々の組織からワタシに協力しても大丈夫そうだという判断が下ったことをワタシはふたりから聞かされ、またひとつ、懸案事項が減った。