有希
みくるちゃんから説明を聞いた土曜日の次の日、つまり日曜日。今日も街探索があるのだが、ワタシとしては今日は古泉くんか有希ちゃんと組みたいところね。なぜなら、彼らからも是非、説明を受けたいと思っているから。そう考えていたワタシは、キョンくんが合流したのを皮切りに近くの喫茶店へ雪崩れ込む団員たちについて行く。店の隅に通された私たちは各々好きな飲み物を頼んだあと、これまたハルヒちゃん手製の爪楊枝くじを引いた。結果は――ハルヒちゃんとみくるちゃん、キョンくんと古泉くん、有希ちゃんとワタシの組み合わせだった。
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ハルヒちゃんに引きずられるみくるちゃん、恭しくも一礼してキョンくんの横に並ぶ古泉くんと別れ、ワタシたちは当ても無く歩き始めた。朝の透き通るような空気を堪能する余裕などワタシには無く、もう少しすれば有希ちゃんが好みそうな図書館が開くけど、その前にワタシの用事を済ませておきたい。と、言うことで、
「どこか喫茶店でも入らない?勿論、ワタシ持ちで」
ハルヒちゃんに見つからないよう、駅とハルヒちゃんチームが行く道とは離れた所の喫茶店に入った。
彼女はクリームメロンソーダ、ワタシはミルクティーを頼んだ。ワタシはミルクティーを一口飲み、本題を切り出す。
「この前はありがとう」
唐突のワタシの礼にか、彼女はきょとんとしているように見えた。ので、もう一言補足する。
「有希ちゃんからの協力の許可。助かるわ」
ワタシが努めて笑顔で言うと、有希ちゃんは「そう」と微かに首を動かした。
「あれはわたし固体ではなく情報統合思念体の意思。礼を言うべきはわたしにではないと推察する」
「それでも、有希ちゃんが許可を取ってくれたようなものだから」
この一言に納得してくれたのか、彼女は再び「そう」と言うと、クリームメロンソーダを一口啜った。取り敢えず、ワタシの気持ちが通じていて良かった。と、安堵の息を漏らす。そしてもうひとつ、どちらかというとこっちの方が重要なんだけど。なるべく真剣な顔で臨む。
「ひとつ、お願いしてもいい?」
「…………」
「キョンくんにもしたのと同じように、あなたたちの状況と考え方を教えて欲しいの。もっとちゃんと今の状況を理解しておきたいと思って…」
「……そう、わかった」
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有希ちゃんが若干早口気味に話してくれたので、時刻はこの喫茶店に入ってからさほど経ってはいなかった。長い説明が終わった後、礼を述べたワタシは更に礼を兼ねて2人分の会計を済ませ、店を出る。集合まではまだまだ時間があるので、有希ちゃんを図書館へ誘ってみた。
「まだ時間あるから図書館でも行く?」
そう尋ねると、神速で彼女は頷いてみせた。……あれ?有希ちゃんってこんなにも分かりやすく頷いたっけ。
「じゃあ行こうか」
言った途端、有希ちゃんは心なしかいつもより早い足取りで図書館を目指し始めて。そしてそれから集合時間まで、ワタシたちは図書館で時間を潰すことになった。