三対三の勝負の結果は翔陽君と影山君、田中先輩のチームの勝利。2セットをとっての大勝利だ。
楽しそうに試合をする、スタミナのある翔陽君。翔陽君とのコンビネーションで何かを掴み取ったような影山君。パワーと雄叫びが印象的な田中先輩。
せっかく才能があるのにどこか諦めたような顔をしている月島君。影でせかせかと自分の仕事をこなしていた山口君。信念の目を持った守備力の広い澤村先輩。影山君が何かを掴み取るきっかけをくれた菅原先輩。
「これは、予想以上に凄いコンビができちゃったかもな」
澤村先輩は翔陽君と影山君のペアをそう称した。私も生意気ながらそう思った。
『潔子先輩、試合ってこんなにワクワクするものなんですね…!』
「そうだね、面白いよね」
『はい、とても!』
体育館の掃除を始めた潔子先輩の背中を追って話しかけに行く。潔子先輩はいたずらが成功したように笑った。そんな表情さえ様になるのだから、美人は恐ろしい。
「月島!」
体育館に響き渡る大きな声で翔陽君が、月島君を呼んだ。何事かと大抵の人はそちらを向く。私と潔子先輩のいる場所が6メートル以内だったためにその会話はよく聞こえる。
「………何」
「試合の最初と最後に握手すんじゃん。今日の最初はしてないけどっ」
むくれた顔で自分の手を差し出す翔陽君の手を、これまた嫌そうな顔をして見ている月島君。どこまで仲が悪い人たちなんだろうか。いや、仲が悪いという表現は適切じゃないだろうか。
『これからチームメイトになるんだよ!握手の一つや二つくらい…!』
私は耐えきれなくなって、2人の話に混ざる。
「聞いたか月島!名前ちゃんもそう言ってるんだから!ほら、握手!」
「っていうか握手の一つや二つって何?」
「い…いいじゃねーか細かいことはっ!」
『細かいことは気にしないで!』
翔陽君とセリフを言うタイミングが被った。前にも何度か行動が被ったりしたし、私たちは恐らくどこか似てるのだろう。
「ハイッ、握手ーっ!」
翔陽君がなかなか握手をしてくれない月島君の手を目がけて飛び跳ねた。
『行け!翔陽君!』
「いや、行けじゃないでしょ。ヒヨコの分際で」
『ヒヨコの分際!?』
ヒヨコの分際で…!?やっぱ私月島君に何かしたかな。前から完全に子供扱いされて、バカにされている気がする。気づくの遅すぎか!
「おい、月島ぁ!もっと同級生と仲良くできねぇのか?」
「できません。こんな子供みたいな人たちとは」
田中先輩の言葉もバッサリと切るあたり。まさに月島君こそ王様みたいだ。
「お、俺は子供じゃねーぞ!」
「は?どう考えてもお前はガキだろ」
「おい影山!お前は俺の敵なのか味方なのか!?」
『わ、私は味方!味方だよ!』
ピョンピョンと跳ねて自分をアピールする。
「うぉぉー!やっぱ名前ちゃんはいい子だ!」
「そう言ってるけど、僕はヒヨコも子供だって言ってるんだからね」
つまりは翔陽君と全く同じ立場で、完全に子供扱いされているというわけだ。
『いいもん!翔陽君と一緒だから!』
「おうっ!」
翔陽君の両手を握ると、強く握り返してくれた。そしてほぼドヤ顔のような状態で彼らを見る。
「離れろぉ、日向ぁ!」
「おい、離れろ。」
嫌です!子供扱いしたのを撤回してもらえるまで離しません!
「そ、そんな目で見んなよっ」
翔陽君の手を握っている間は、影山君と田中先輩の視線が痛かった。他の人たちの視線も心無しか穏やかではなくて、手を握っていただけなのに申し訳なくなった。翔陽君の手が小刻みに震えていた。
『(こ、怖いぃぃぃぃい!みんなの目怖い!)』
その視線が全て翔陽君に向けられていたなんて想像もつかなかった。
しかし、月島君と仲良くなる日は遠そうだ。一体どうやったら仲良くしてくれるんだろう。これは今後の私への課題だ。月島君だけではない。もう一人難しい人がいる。そう、影山君だ。私はなんとかして二人との接触を試みようとはするが、果たしてどうなるかは分からない。
仮に私が月島君と影山君と仲良くなったとしても、二人が仲良しになるとは限らない。見た感じ二人で嫌悪しあっている感じだ。
いつか一年生の仲睦まじい光景をみる日を夢見て、これからも頑張ろう。