「わぁーヒヨコちゃんだ!元気してる〜?」
『はい、今日も元気いっぱいです!及川さんは…、』
「え、何?"及川さん"だって?お兄ちゃんそんな呼び方許した覚えはありません!」
『お、お兄ちゃんは、今日も……元気そうですね!』
及川はデレデレした様子でヒヨコこと名前に近づいていく。その様子を見た者たちは軽犯罪の感じが否めなかったという。哀れな及川だ。
「……おい、なんだあいつ」
「及川の野郎が烏野のマネに自分のこと"お兄ちゃん"って呼ばせてんだとよ」
「なんだ、岩泉知ってるのか」
「あんだけ言ってりゃ嫌でも耳に入ってくんだよ…!」
岩泉は拳をギュッと握った。相当イライラしている様子だ。只でさえ及川と一番長く一緒にいるのは岩泉だというのに、さっき及川が哀れだとか言ったけど、それに付き合わされる岩泉の方がよっぽど憐れだ。同情する。
「ちょっとちょっとー!マッキー!まっつん!来て来て〜、あ、ついでに岩ちゃんも」
三人はちょっとイラっとした様子でしぶしぶ及川の元へ行く。どうせくだらない事だろうとため息を吐いた。
「じゃじゃーん!ヒヨコちゃんでーす!」
「「「(……知ってるわ)」」」
『は、はじめまして?と、こんにちは!ヒヨ…、名前です』
「「「(今自分でヒヨコって言おうとしたよな…)」」」
テンパっている名前を見て余計に及川がデレデレし始めた。こうなればウザさが百倍にも膨れ上がりかねない。
「及川先輩、岩泉先輩、監督がお呼びです」
「えー、今じゃなきゃだめなのー?」
「はい、主将と副主将にお話があるとのことでした」
天の声、と言ったところだろうか。正にタイミングのいい呼び出しに、三人はホッとしていた。当の及川は不満を漏らしながら、しぶしぶ岩泉と2人で監督の元へ向かった。
残されたのは名前と面識のない花巻と松川のみだ。当然一番大変な状況下に置かれているのは名前だ。目の前に二人の男、ましてや自分よりも何十センチも大きい男たちだ。だが、名前は不思議と2人には怖さと言うものを覚えなかった。
「えっと、ヒヨコちゃん、だっけ?」
花巻が第一声をあげる。
『ヒヨコって呼ばれてますけど、一応名前と言います!』
「でもなんかヒヨコの方が呼びやすそうだし、ヒヨコでいい?」
『もうなんでもどんとこいです!えっと、マッキー先輩?それとまっつん先輩…ですよね?』
名前があまりにも真顔で言うものだからついつい二人は笑ってしまった。あだ名に先輩をつけて呼ばれるのがここまで可笑しいとは思いもしなかったからだ。
「先輩、よりだったら俺らも"お兄ちゃん"って呼ばれたいよな、松川」
「あぁ、そうだな」
二人は示し合わせたようにニヤリと笑った。悪意などはない、ただ名前がどう言った反応を示すか見たかっただけだ。
『お兄ちゃん、ですか…』
「そうそう」
『じゃあ…マッキーお兄ちゃんとまっつんお兄ちゃんですね』
恥じらいながらも呟かれた名前の言葉に、ちょっとはお兄ちゃんと呼ばれたい及川の気持ちが分かった気がした2人。
「…悪くないな」
「なかなかいいかも」
『えへへ、なんかお二方は本当にお兄ちゃんみたいです』
名前の無邪気で眩しい笑顔に殺られた2人がいたとかいないとか。
リクエスト:楓様より
花巻と松川がお兄ちゃんと呼ばれる