ひよこが駆け巡る!





『仁花ちゃん!一緒に探検に行こうー!』

昼ごはんを作っていたはずの名前はキラキラと目を輝かせて、谷地を呼んだ。ちょうど洗濯物を干し終わった谷地は、突然名前を呼ばれてびくりと肩を揺らした。

「た、探検?」
『そうだよ。合宿所の周りを探検するの!』
「わぁー、行きたいっ!けどいいのかな…?」
『潔子先輩が休憩がてらに好きなことしていいよ、って言ってくれたんだよ〜』

丁度今頃、選手たちは体育館で長めの休憩時間に入っている頃だ。要するにお昼休みに入ったわけだ。かと言ってすぐに昼食をとるわけではない。だからマネージャーの出番はまだまだというわけだ。

谷地の方も、清水や名前が言うことなら嘘なく信じることが出来る。かくして二人の合宿探検が始まった。

『どうして〜、空は青なの〜〜』

名前は脳天気に変な歌を歌い出す。谷地はそれがいつもの彼女だと既に理解しているらしい。谷地は名前と一緒にふざけるときもあれば、案外遠目から彼女の行動を見守っている時がある。今回は紛れもない前者だ。谷地の方も何か一緒に歌いたくてうずうずしている。

名前と一緒にいることは、谷地にとって今となっては当たり前であり、自分が自然体でいられる数少ない人だ。それは何故かと考えたとき、周りの者は口をそろえて”根本的に性格がにているから”だと答えるだろう。多少は性格は違えど、結局根本的には性格は似ているのだ。

『どうしておなかが空くの〜。ふぎゃ!』

それは建物の角だった。歌いながら歩いていた名前は誰かと軽く衝突した。

『ごっ、ごごめんなさいっ!大丈夫ですか?』
「うん、そっちは大丈夫?」

名前は慌てて謝罪をする。礼をするその勢いはものすごかった。そしてそのぶつかった相手は、この間第二体育館で知り合った赤葦だった。正確に言えば、初めて会ったのはもっと別の場所だが、会話として話すようになったのはその時が初めてだ。

『赤葦先輩でしたか!…良かった、知ってる人で』
「知らない人だったらどうするつもりだったの」
『怖さと身長の高さのあまり、土下座する寸前だったと思います』
「それはやりすぎだから」

谷地はこの二人の会話についていけない。他校にもかかわらずいつの間にか知り合っていた二人。知り合いというだけではなく、谷地には二人が仲睦まじく見えた。

『谷ー地ちゃーん!こちら、赤葦先輩だよ!』
「はっ、ぅ!あ、あ、赤葦先輩!?」
「何もそんな驚くことないだろ」

他校の選手とまじまじ話すのがほぼ初めてな谷地はすっかり固まっていた。その様子をみた名前は場を和ませるための冗談を言った。

『赤葦先輩がこっ、怖いのがいけないんですよ!』
「…怖いって、俺がこのまま言われっぱなしだと思う?」
『えっ、えっ!わーー、あは、ははは、やめ、てくださ、い、あはは』

名前の言葉にムッとした赤葦は、彼女の背後に回り、コチョコチョっと脇腹をくすぐり始めた。

『ごめんなさっ、はは、許してくださ、い』
「だったら、もう怖いとか言わないで」
『いいましぇん!……うぴ、…言いませんから!』
「それでいい。じゃ、また」

最後に赤葦は名前の頭をポンと撫でた。谷地にはどうしてもこの前知り合った同士には見えなかった。

『もう、赤葦先輩!』

あぁー名前ちゃん怒ってるなぁと谷地は苦笑い。

『なんで私脇腹駄目なの知ってたの?』

と谷地の検討は外れ、観点のずれたところで怒っていたのであった。そして名前をいろいろな意味で尊敬するのであった。

リクエスト:しいなぎ様より
赤葦と谷地の合宿の絡み

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