ひよこが駆け巡る!





お出かけの帰り、前方に部活帰りであろうジャージ姿の及川さんを発見した。彼は音楽を聴きながら、楽しそうに歩いている。これは話しかけてもいいのかと迷ったけど、私は及川さんの元に駆けて、挨拶をすることにした。

及川さんの目の前に立ち、行き先を塞ぐ。えっと、お兄ちゃんって呼べばいいんだよね。お兄ちゃん…お兄ちゃん…。あれ、そう言えばお父さん昨日ケーキ買ってきてくれてたよな。冷蔵庫で冷やしてる奴後で食べようっと。

「あれー、ヒヨコちゃんじゃない。こんなところでどうしたの?」

及川さんが私の存在に気がついたようだ。イヤホンを耳から外して、久しぶりだね〜、なんて笑顔を手を振ってくれた。

『こんにちは、お父さん!………!』
「え?お父さん……?」

あぁーーーーーー!え、お父さん?今私お父さんって言った?え、え、……あ。

私は、ただお兄ちゃんと呼びかけるつもりで。でも何故か間違えて「お父さん」と言ってしまうなんてーーー!私はすぐ間違いに気がついて、真っ赤になって恥ずかしい気持ちでいっぱいだった。穴があったら今すぐにでも入りたい気分だ。

だってこんな失態…、恥ずかしすぎますよ!

『あ、あの…すみませ…』
「お父さんかぁー。及川さんそんなに老けてるかな」
『いえ、お兄ちゃんって呼ぼうとしたら間違っちゃったんです…。本当にごめんなさい…!』
「いや、もう謝らなくていいよ。でもお父さんかぁ、なんか不思議な感じ」

及川さんはいつものようにニコニコ笑っている。本当に気にした様子はなさそうだ。私はひとまずホッとした。

「でもさ、ヒヨコちゃんみたいな娘がいたら毎日楽しいだろうなぁ。」

いつもの調子で笑って言っているけど、私はいつも以上に心が温かくなっていた。

『私も、及川さんが家族だったら毎日笑って過ごせると思います』

なんか恥ずかしいですね、と及川さんに同意を求めると、今まで見たこともない柔らかい表情で笑っていた。つられて私も笑うと、いつかそうなるといいね…、と彼が言った声は風に乗って私に届いた。

その言葉の真意を知らない私は無意識に、そうですね、と零した。


及川さんが家族になったら____。
やっぱりお兄ちゃんになるのだろうか。
それとも……____。

ううん、私にはこんな小難しい話は似合わない!今は今の関係を楽しまなきゃ!


(及川の彼女に対するそれまでの認識は「可愛い可愛い小さい女子」だったが、無防備に「お父さん!」と呼びかける仕草とその後の真っ赤になって恥ずかしがっている姿に「落ちた」ことは、誰にも言っていない。)

リクエスト:彼方様
及川さんお兄ちゃんとかちょっとうざそうですね。

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