今日は練習試合が予想よりも早く終わったため、早く帰れることになった。
名前は部室に篭って今日の試合で使ったものなどを率先して片付けている。その他の部員は練習試合の疲れからか早く帰ってしまった。
俺は部室に忘れ物を取りに行くためと、名前と一緒に帰るために来た道を引き返した。
部室の中から何やら物音が聞こえる。多分彼女が物を整理している音だ。
ほんの悪戯心で、音を立てないように細心の注意を払い、こっそり部室の中へ入った。
そうしたら、彼女は何かふんふん歌いながら洗濯物たたんでいた。
よく聞き取れなかったので、そっと距離をつめると、何やら昔の童話のテーマソングのようなメロディだった。誰もが知っているような曲だった。
彼女は気まぐれで裏表がないので、これが本当の彼女だと知っても驚かない。ただ、歌が渋いな。思わず笑ってしまいそうになるのを必死に堪えて更に間合いをつめる。
面白いので離れてしばらく聞いてたら、歌詞もめちゃくちゃだし、おかしくて笑いの発作を止めるのに必死だった。正直この辺りからもう彼女の歌を聴くのが可笑しすぎて、腹が痛くなってきた。もう少して過呼吸に陥ってしまうレベルだ。
そして歌はようやくラストの部分へ。どう締めるのかと思っていたら、
『好きです〜♪木兎先輩〜、赤葦先輩〜、木葉先輩〜、猿杙先輩〜』
曲調がバラバラで、しかもうちの部員の名前を言い出した。部員全員の名前を言い終わったので、終わりかなと思ったら、まだ続きがあったらしい。
『でも1番は、赤葦先輩!なーんて、ふふ』
なんか、"そうくるのか"って意表つかれるやら、機嫌良く後奏部分まで歌ってんのがおかしいやら、もう何だか愛しいやらで、もう一気にふっと吹き出してしまった。あぁ、今すぐ抱きしめたい。
「名前」
こっちも不意打ちで名前を呼ぶ。そしたら名前がまたものすごく驚いて、
『あか……あか、あかか…赤葦先輩ぃぃぃぃ!?いつから、そそ、そこに!?えぇ!?』
目を目一杯開いて驚いた彼女。最初は呆然としていた彼女の頬にはようやく赤みを取り戻してきた。驚き方は、逆毛立った猫の如くだ。もう堪らなく愛しくなる。
もうなんか可愛くて愛しくて、
『いつからいたんですか…!なんで言ってくれなかったんですか!』
とジタバタ暴れる彼女を自分の腕に閉じ込めることに成功した。こうして抱きしめてみるとやはり小さいな、ちゃんと女の子なんだと感じた。
「結構前から」
『どうして言ってくれないんですか〜。恥ずかしいです……!』
今度は頬を膨らませて俺を大して怖くない顔で睨んでいる。それにちょっと涙目になっている。
「可愛かったからずっと見てたくなった」
『……!』
俺は彼女の首筋に顔を埋めて、もっと強く抱きしめた。彼女は戸惑いながらもギュッと抱き返してきたので余計に愛しくなった。
リクエスト:ゆりん様
ほのぼの甘になりました。