合宿にて____。
「名前!」
『木兎さん!』
丁度体育館で自主練をしている木兎さんを見つけたので、トタトタと足音をたてながら近寄る。そうしたら思いのほか見つかるのが早くて、野生の勘か!?と感心してしまった。
「どうしたー?」
木兎さんは、たった1人で自らボールを上げては打つを繰り返していた。赤葦先輩に振られてしまったのだろうか。
『私、ご迷惑でなければボール出しますよ』
「おぉ、本当か!?ありがてぇな!」
敵チームとは言え頑張っている人を見逃すわけにはいかない。それに全国に行ったら当たるかもしれないし、研究しておくのもいいかもしれない。しかし一概に研究と言っても、木兎さんのバレーは真っ直ぐのため、たいして分析する必要もなく、逆に研究が難しいかもしれない。
『いきますよー』
「ヘイヘーイ!」
木兎さんのかけ声と同時にふわりとしたボールを下から投げる。瞬く間にボールはあっちのコートに飛んでいた。放ったボールの風圧で目が乾いてしまうくらいだ。
早くて力強い木兎さんのスパイクに、思わず感嘆の声をあげる。
『木兎さん、凄かったです。遠くからみても凄いなぁって思ったんですけど、近くでみるともっともっと凄くて。とにかく、小学生並の感想しか言えないんですけど、格好良かったです!』
あんなに力強いスパイクを打てたらどんなに気持ちがいいだろうか。
「おぉ、こんなに褒められたの初めてだぁぁぁぁ」
本来であればもっと凄さについて語りたかったけど、相応しい言葉が見つからない。とにかくパワフルですごいという言葉しか出てこない。
『木兎さんのスパイクを受けた人、絶対痛いですよね』
「大丈夫、死にはしねーよ」
二人だけの体育館に違う種類の低い声が聞こえた。その人物とは、どちらとも関わりを持つ黒尾だった。彼はいつものニヤリとした笑みで、体育館の入り口に立っていた。
「黒尾、俺、名前にいろいろ褒められた!やっぱり俺最強〜!」
「へぇへぇ、確かにおまえのスパイクはすげえよ。でもなぁ、受けられない事もないんでね」
黒尾は勝ち誇ったような表情を浮かべている。
「なにーーー!!」
『えぇ!黒尾さん、木兎さんのスパイク受けられるんですか!?』
「まぁな」
一段と深くニヤリと不適な笑みを零した。そこから計り知れない余裕を感じられる。
『凄い、凄いです!!』
軽く拍手をして黒尾さんを見上げる。
「んな目で見るなよ。照れるだろ」
『木兎さんも黒尾さんも凄いなぁ…!』
凄い人たちに囲まれている私、凄くないですか!?後でみんなに自慢しちゃおう。
「なぁ、名前!それよりスパイク練習の続きしようぜ!」
『はい!』
木兎さんは負けていられないと言わんばかりに、スパイク練習の続きを促してきた。
「いや、てか俺の練習付き合ってくんね?」
『…はい?』
更にそれを遮るような黒尾の声に頭の中がグルグルと回りだした。
え、え?どうしましょう。お二人、さっきまで仲良かったですよね?2人で一緒に練習するのではダメなのだろうか。いや、しかし各々でやりたいメニューがあるのだろう。
いっそ私が2人いたら、2人の練習に付き合えたのに…。えぇい!真っ二つに割れろ私の体!私は魔法使いでもマジシャンでも超能力者でも無い。体が真っ二つに割れたら化け物だ。勿論そんな事はできない。
まずは、説得しなければ…!
『あの!お2人で一緒に練習…しませんか…?』
2人の片腕をギュッと握る。そしてぎこちなく頬を引き攣らせると、2人が顔を見合わせてップっと笑った。
「ま、しゃーねーな」
「よし、そうと決まったら、やるぞー!」
『はい!』
良かった〜!心から安心しました。
(あんな顔見せられちゃ、ねぇ)
(親を見失ったヒヨコみたい表情だったな)
(どういう表現なの、それ?)
リクエスト:涼様
取り合いって難しいですね。