ひよこが駆け巡る!





梢様リクエスト
【影山と月島の取り合い】



『ねぇ、飛雄君!バレー教えて』

始まりは些細な一言だった。

「別にいいけど、なんでだ?」
『ほら、今度球技大会があるじゃない?その時のために今から特訓しようと思って』

名前は力があることを示したいのだろう、両手に力を入れて力こぶを見せたいのだが、全くもって力があるようには見えない。細い腕がただ宙にあるだけだ。

『バレー部で同じクラスなの飛雄君しかいないから、助かったよ〜』
「俺は何から教えればいいんだ?」
『んーと、サーブかな』
「んなの簡単だろ。こう持って、ギュインだ」

ボールを持ちながら実践し始めたが、擬音語だけで意味が分からない。そもそもギュインでは伝わらないことに気づいていないのだろう。やはり影山は実践型の天才肌なのだろうかと思わずにはいられない訳の分からない説明だ。

影山からしてみれは、ジャンプサーブなんて難易度の高い技ではなく、普通のサーブを教えたつもりだったし、寧ろこのサーブができない奴がいるのだろうかと思っているほどだった。名前も教え通りにギュインと腕を振って見たが、奥のコートまで届かない。その前にあまりの衝撃に肩が外れそうになった。

「そんなんでヒヨコが理解できるわけないじゃん。馬鹿なの?」

そこに割り込んできたのは、見下すような顔をした月島だ。

「あ”!?」

目を合わせればすぐに、喧嘩をする2人。しかしそれを喧嘩と思わないマイペースなヒヨコがいる。恐ろしくアンバランスだ。

「もっと説明が上手い人に聞いた方がいいんじゃない?」

少しキレ気味の影山に追い討ちをかける嫌味たらしい笑み。それでは怒りを助長するだけだった。

「じゃあ、お前はなんて説明するんだよ」
「少なくとも王様よりは上手く説明出来ると思うけど」
「なんだと……!」

いがみ合う2人。どうみても火花が散っている。しかし前述の通りそれを喧嘩だと思わない者がいた。

『そう言えばさ、聞いてよ!今日国語の授業で面白いことあったんだよ〜』


彼女を纏う空気は明らかに他と違う。周りにお花畑が見える。もはや毒気が抜かれる思いがした。自分たちはなんと小さなことでいがみ合っていたのかと思わせるほどである。

「…ハァ、……ヒヨコ」
『ん?』
「今なら教えてあげるけど…どうする?」
『いいんですか!敵なのに!』
「別に、女子だし。直接の敵にはならないから」

それらしい理由を付けて、返事をする月島を、物凄い顔で睨む影山。確かに先ほどの説明は抽象的であったと反省をしたところだ。
 
『飛雄君!月島君も教えてくれるってさーー!!』
「「は?」」
『え?』

きょとんとした顔で2人を交互に見る名前は、悪気などない。2人も先生が出来た事によって喜ぶ始末だ。
 
『さっそく教えてください!先輩!!』

無邪気な笑みに何も言えなくなった2人は、しぶしぶ教えることにした。これまで幾度となく繰り返されてきた影山と月島によるヒヨコ争奪戦だが、最後に勝つのはいつもヒヨコだった。
 

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