ねむ様リクエスト
【第三体育館組に、囲まれる】
『黒尾さん〜〜、ちょっと痛いです』
「気のせいじゃね?」
『いつもの優しさがありません!!』
休憩中、私は黒尾さんに撫でくりまわされていた。いつもは心地よいと感じるそれは、少し力強く感じる。
「名前ちゃんが可愛いから、つい撫でちゃうんだよな〜」
絶対からかわれている。黒尾さんともあろう人が、私程度の人間を可愛いというなんてありえない。騙されないぞ〜!!
『冗談言わないでください!』
「あり?照れると思ったんだけど」
「黒尾!!名前を虐めてんのか!?」
嵐のごとく現れた木兎さんが、突進する勢いで黒尾さんの横に来た。どうやら彼の目には私が虐められているように見えたらしい。それは半分正解で半分ハズレだ。スキンシップと言われればそこまでだ。
「虐めてねーよ。ちょーっと可愛がってるだけだろ」
ちょーっとの部分に含みがあるような言い方だ。
「何!?じゃあ俺も!」
練習後にも関わらずピンピンしている木兎さんは、唐突に私を担ぎ始めた。そして高速で走り回る始末だ。これが木兎さんなりの可愛がりらしい。将来子供になる子が心配になってしまうほど、穏やかではない。
私はされるがままに担がれているが、やめるタイミングが掴めない。
「…あまり虐めないであげてくださいよ。ヒヨコ、ビビりなんで」
『月島君ーーー!!』
ビビりかどうかは分からないが、助かる。まさかあの月島君が助けてくれるとは想像できなかった。
「そうなのか?」
『楽しかったけど、そろそろ降ろして欲しいです』
「そうかそうか!!楽しかったか!!」
豪快に笑いながら降ろしてくれた。ちょっと楽しかったけど、さすがに長時間はきつい。
『月島君、ありがとう』
「…何のこと?」
『なんでもなーい!』
月島君ったら本当は気づいてるくせに〜〜!こんな反応にももう慣れた。月島君は俗に言うツンデレの部類に入るのだろう。彼はふいっと顔を背けてしまった。そこへ、赤葦さんがやってきた。そう、私は4人に囲まれている状態だ。
「黒尾さんと木兎さんに構われるって大変だね」
『でも、撫でられるのは好きですよ!!』
あわよくば!赤葦さんに撫でて欲しい。期待を込めて赤葦さんを見ていると、私の勢いに怯んだのかどうか分からないが、困ったように笑って手を伸ばしてきた。
髪を崩さないようにしてくれているのか、前後に手が動く。手は平面を撫でるように真っ直ぐで、指先は動いていない。撫でることに慣れていないのだろう。
『ふふ、赤葦さん、優しすぎます』
「そうそう、こうやって撫でるんだよ」
『うわ〜』
赤葦さんと交代した黒尾さんが再び私を撫でる。彼は撫で撫で選手権に出たら上位に食い込むほど撫でるのがうまい。気持ちいい所をついているというか、思わず目を細めたくなる美味さだ。
『気持ちいです〜』
耐えきれず目を細め、微笑んでしまった。
「…黒尾さん、もう一回やらせてください」
「おや〜、嫉妬ですかな?」
「俺もやる!!黒尾、そこ代われ!」
「木兎クンには無理だと思うけどな〜」
「……なんですかその目」
「ツッキーはいいのかな〜って思っただけ」
「僕は別に…。やろうと思えばいつでも出来ますし。東・京・の・皆・さ・んとは違って」
頭上で行われるやり取りになんと反応したら良いか分からず、黙って聞く。
「ツッキー言うね〜。いっそ名前ちゃん、東京に来ればいいのに」
「そしたら梟谷に来いよ!!俺がみっちり指導してやるから!」
「何を指導するんですか」
「そこはツッコまないで!!」
この会話をだんだん面白く感じるようになってきた。しかし私も言われたままではいけない。
『東京に来て皆さんと一緒にバレーをするのも楽しそうだなぁ…』
「だろ?だろ!」
『でも、やっぱり烏野で全国目指したいです!!ね、月島君!!』
皆さんとバレーをするのも悪くない。だけど、やっぱりずっと一緒に練習をしてきたみんなと一緒に勝ち進みたい。それが私の切なる願いだ。
(あんな笑顔を見せられたら、何も言えねぇよな)
(それにしてもあのツッキーの勝ち誇った顔!ムカつくぜ)
(俺もちょっとイラっときました)