華様リクエスト
【菅原さんに助けを求める】
勉強机に向かい、適当にバレー雑誌を眺めていると遠くで音がする。
外は地面に叩きつけるような強い雨。そして時々光を放ちながら、ハイペースで鳴る雷。こんな時思うのは、雷が苦手な名前のことだ。一度その場に立ち会った時があったけど、雷がなると目を震わせて、耳を塞いでいた。絶対あれは我慢していた。
枕元にある携帯を手に取る。そして彼女の元へ電話をかける。よくある機械音をじっと聞きながら途切れるのを待つ。そしてギリギリのところで止まり、聞こえる声。
『……も、もしもし』
いつもと違うか細い声に、やっぱりなと小さく笑う。いつもはもうちょっと元気なんだけどなー。
「名前が今、何してるか当てようか?」
『え!』
電話越しにも聞こえる相変わらずの煩い雨音。彼女は多分まだ部室にいるはずだ。
「空が光るのが恐くてカーテンを閉めたけど、雷の音が大きくて震えてる。」
『…エスパーですか!!』
息を呑んだ音と、何かが擦れるような音。当てられて悔しいのか少し篭った声で強くそう言った。
「本当可愛いな」
意図せずとも出た声が、向こうの雷の音と重なる。多分今の声は聞こえていないと思う。
『…だってっ!雷怖いです…!』
そんな弱りきった彼女のそばに居てやりたくて仕方ない。
「俺、今からそっちに行くから」
『え?』
「また後で」
『え、ちょ…っ』
戸惑うような声を無視して、電話を切る。彼女のことだから、来なくていいとか、ゆっくり休んでほしいと言う。雷が恐くて一人じゃいられないくせに。無駄に意地をはるあたりも可愛い。彼女の行動は予測不能な事が多いけど、こういう時は単純明快で助かる。
「どうしてもほっとけないんだよな…」
傘をさして、雨の道に飛び出した。部室までは走って十数分くらいだろうか。お目当ての場所に着くと、ドアの隙間からそっと出た顔。きゅっと唇を噛んで、
『うっ……ごわがったです………』
俺を見つけた途端、ドアを全開して飛びついて来た。よしよしと撫でてやると、彼女の震えが少しだけ収まった。ほんと、怖かったんだな…。
「大丈夫、大丈夫」
そう言ってるそばから、大きな音がしてその瞬間、その場にしゃがみ込み耳を塞ぐ。思わず、笑みが零れる。ほんと、俺も重症だ。
膝裏に腕を通し、そっと抱き上げる。耳を塞いだまま、続く雷の音に震えて、文句も言えないようだから逆に都合がいい。彼女をこうして横抱きにすることができる日がくるとは思っていなかった。
「俺がそばに居るから…、もう泣くな」
耳元でそう囁いた瞬間、動きが止まる。よしよし、とあやすように背中を撫でれば、もたれかかるように力が抜ける。それでも音が聞こえるたびにぴくりと体が跳ねる。
『どんな顔をしていいか分からないです』
「………ん?」
『雷はすっごく怖いけど、菅原先輩がそばに居てくれて嬉しいから…』
甘えるように擦り寄られ、顔の緩みが止まらない。腕に力を入れ直して、そっと包み込むように抱きしめる。なんで、こんなに可愛いんだか…。全部、全部、閉じ込めたくて仕方ない。
なんだか雷に勝った気分になった。