ひよこが駆け巡る!





○様リクエスト
【ifで及川さんと家族】

「名前、何笑ってんの?」
『可愛いわが娘のアルバムを見てたら、徹君が凄い顔してる写真を見つけてね!』

ほら、と差し出されたアルバムを見たら、娘をだらしない顔で見ている俺の写真があった。思い返せばいろんな思い出がある。名前の呼び方にちゃんがつかなくなって、彼女の敬語がとれて、俺を君づけで呼ぶようになって。そこまでは凄く長かった。中々俺のアプローチに気づかない彼女を必死に捕まえようとしたなぁ。

時の流れは感慨深い。しみじみと感傷に浸っていると、服がクイっと引っ張られた。

「ねぇねぇ」

まだ拙い言葉を発する娘は、紛れもなく名前似だ。パッチリとした二重の目元も、可愛い小さな唇も。鼻の形は俺似だけど、その他はほとんど彼女に似ている。今は4歳で可愛い盛りなんだけど、年齢を増すごとに名前に似てきている。

「どうしたの〜」

わが娘は他所の何処の子よりも可愛い。本当、お世辞抜きで。いっちばん可愛いから将来悪い男に捕まらないか心配だ。だからもうデレデレになっている自信がある。

「おとうしゃん、だっこ〜」

そう上目遣い気味に、拙い言葉で言ってくる娘を見てふと思い出した。何処かで感じたこの既視感。しかも結構昔だ。こんなにも舌足らずじゃなかったけど、確かに昔そう呼ばれた。


「ねぇ名前」

『はーい』

「昔、誰かが俺の事お父さんって呼んだの思い出しちゃった」

『………え…!』

思い出したのか、目を泳がせ始めた。こういう分かりやすい所も好きだな。
昔は間違えて言われちゃったけど、今はあながち間違いじゃない。ほら、年をとった老夫婦がお爺さんをお父さんって言うようにさ。

「ねぇ、もう一回言ってみてよ」

『……お、お父さん』


あの時と同じように下から見上げるように言われた。無邪気さはないし、恥じらいもあるけど、あの時と同じままだ。基本的な所は全然変わっていない。

「はぁ〜あの時は可愛かったなぁ」
『……あの時だけですか?』

思い出しながらにやけていると、袖をつかんだ名前が年端もいかない少女のようなあどけなさを見せて、俺を見上げていた。不安そうに揺れる瞳に心臓を鷲掴みにされた想いがした。

「……っ〜!今も十分可愛いよ!!」

いつまで経っても彼女は可愛いひよこのままだ。

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