ひよこが駆け巡る!





マリナ様リクエスト
【ifで月島と恋人】

今日はヒヨコと2人で出かける予定があった。大学生になってからというもの、一緒にいる時間が格段に多くなった。事前に彼女の家に迎えに行く事になってたんだけど、チャイムを押しても反応はない。こういった事は今まで一度もなかった。

お子様お子様と茶化してはいるけど、意外としっかりとしているのが名前だ。滅多にない機会。こいつ寝坊か、と多少いらいらしながらも、合鍵を使って中に入る。


「入るよ」

一応礼儀というものがある。不法侵入にはならないと思いつつも、挨拶くらいは言っておく。彼女がいるであろう部屋に足を進める。


『…………』


寝ている。

ベッドに転がってグッスリと。案外寝相は悪くないらしい。しっかり仰向けになって、寝息を立てる。インターホンを押しても気付かなかったと言うのか。寝相は悪くなくても、寝起きは悪いらしい。

足音を極力立てないように近づき、ベッドの横で止まる。寝顔だけを見ると余計に幼く見える。大学生にもなって中学生に間違われる事があるし、僕と兄妹だと思われる時もある。全然似ていないが、他人にとってはそんなのは関係ないらしい。

彼女は子供に見られるのを嫌がる。

『蛍君がロリコンに思われたらどうしよう……』

とさえ考える始末である。結局彼女は僕を想ってくれているんだと思った。自分の事だから自分で怒ればいいのに。

だから急に化粧を始めてみたり、ヒールを履くようになって驚いた。僕からしてみれば無理に背伸びをしているようにしか見えない。

無理をするなと言いたい。僕が……好きになったのは着飾った君ではないのだと。


寝ている彼女に引き寄せられるように唇を近づける。普段起きている彼女にこんな事できないから、起こさないように慎重に。それでも僕はなんとなくだけど、彼女が寝たふりをしている事に気づいていたのかもしれない。

唇が触れ合った時、その瞬間に身体中に電撃が走る。しかしこんなに衝撃的なのに、体は、心は温かい。優しさに触れたようだった。

キスは何度かした。しかしどれもぎこちなく、味気のないもの。彼女がいつも緊張してガチゴチになるから、雰囲気がめちゃくちゃなのだ。

だからこんなに安心できるキスは初めてだ。緊張こそしたが、安心もできた。

「無理に大人にならなくていいんだけど…」

小さな呟きは彼女に届いてしまっているだろうか。らしくもなく優しく頭を撫でると、彼女が徐々に目を開けてきた。バッチリと目があうが、驚かない。

『蛍君………、ありがとう』

目を細めた彼女は、化粧も、オシャレもしてないのに大人びて見えた。

『大好き』

心からの想いが届いた気がした。それに答えるなんてガラじゃないけど、今日はなんとなく伝えてもいいと思った。

「……僕も」
『うん、ありがとう!』

こんな言葉だけでも幸福を感じられる。彼女といると自分が知らない感情をする事ができる。
不思議で、愛おしい存在だ。

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