すず様リクエスト
【赤葦で合宿に熱中症】
合宿も中盤だ。
動き回る選手を見ていると、なんだか体が怠くなってきた事に気づいた。
瞼が重い。だけど試合中だからどこかに行くこともできず、気合を入れて試合を見ていると、やはりそろそろ限界になってきたのか、世界が回り始めた。
潔子先輩に言うと、熱中症を疑われた。熱中症になってから水分を取るのは遅いが、少しでも気休めになればと思い、スポーツドリンクを飲む。
なんたる不覚……!体調管理もできないマネージャーなんていらないと言われるかもしれない。
早く回復しないと……!
とりあえず邪魔にならないように、そして外の空気を吸って気持ちを入れ替えるために外で休む事にした。
潔子先輩は途中まで着いてきてくれたが、潔子先輩がいないと選手のやる気に関わる。なんとか無理を言って戻ってもらった。
取り敢えず木陰で休もうと移動していると、体育館の角から出てきた赤葦さんと遭遇した。右手にはタオルを持っている。
目と目があってお辞儀をすると、こちらに歩いてきた。
たしか梟谷は今は休憩の時間だ。
「どうした?烏野まだ試合中だよね?」
『はい、…ちょっとだけ、具合が悪くて休ませてもらってます』
明るく話したいけど力が入らない。できる限りを尽くして笑うと、赤葦さんは心配そうな顔でこちらを見ている。
「もっと涼しいところで休んだほうがいいんじゃない?」
確かに中と外の温度はさして変わらないが、外はたまに風がくるので気持ちがいい。
『ここ、意外と涼しいので大丈夫です〜』
言葉に覇気がない。ふにゃんふにゃんになって話していると、余計に心配をかけたようで、持ってきていたスポーツドリンクを開けて、飲ませてくれた。自分で飲めると思っていたが案外体がだるいものだ。
だから少し飲んだだけで生き返った気分になった。
『ありがとうございます、赤葦さん』
「大丈夫?苦しくない?」
『はい、大分落ち着いてきました』
言葉に嘘はなかった。赤葦さんが来てくれてから回復へ向かっている。そもそも選手の方に心配してもらうなんてあるまじき行為だ。さっきまでは考えることすらままならなかったから、そんな事まで考える余裕がなかった。
しかし、また体が重くなってきた。これは睡眠を欲しているのだろうか。瞼が重くなっていくのに逆らえずに目を閉じる。
うっすらとした微睡みの中、最後に見たのは赤葦さんの顔だった気がする。
そして目が冷めるとあれから1時間が経っていた。
しかも場所は、マネージャーが寝る部屋として使っている教室だった。
気づいたときには少しのダルさは残っているものの、目がハッキリ開くようになっていた。
しかし私はいつの間にここに来たんだろう。疑問を抱きながら体育館へ戻り、皆さんに迷惑をかけた事を謝った。
全力で心配してくれた仲間がいて、嬉しさを覚えた。そして、一息ついた後、潔子先輩は言った。
「梟谷のセッターが教室まで運んでくれたみたいだよ」
それを聞いた瞬間頭が爆発しそうになった。そんなっ…、次試合があっただろうに余計な体力を使わせてしまった。
その後、お礼を兼ねて謝りに行くと、梟谷の方々に茶化される事になる。しかし、赤葦さんはいい人だ。
「困ったときはいつでも頼って」
なんて普通は言えない。よほど人間が出来ている。そんな事をサラリと言えるスマートな人間になりたいが、そう簡単ではない。
『今、困ってます』
「……?」
『赤葦さんが素敵な人すぎて困ってます』
(何を返せばいいか分からなかったけど嬉しかった。そして名前の純粋な眼差しを見て、更に嬉しくなった)