ひよこが駆け巡る!





なつ様リクエスト
【赤葦と肝試し】

「うっし、じゃあ合宿恒例の肝試し始めっか」

黒尾さんが仕切って、企画が進行する。合宿も中盤だ。

そして何かのご縁で参加することになった肝試し。

参加メンバーは音駒からは黒尾さん、山本さん、犬岡君、リエーフ君、夜久さん、梟谷からは木兎さん、赤葦さん、木葉さん、猿杙さん、烏野からは澤村先輩、菅原先輩、田中先輩、西谷先輩、月島君、翔陽君。そしてマネージャーは全員参加だ。

田中先輩、西谷先輩、山本さんあたりは潔子先輩とペアを組みたそうだが、おそらく一緒に長時間いることが出来ないと思う。分かります、その気持ち。

くじは予め黒尾さんと木兎さんとで作っておいたらしい。紙には数字がふってあり、同じ数字の人とペアになる方式だ。

誰でもいいから、一緒にいて心強い人がいいなぁと、なんとなくくじを引いた。

私は8番だった。
隣にいた仁花ちゃんと潔子先輩のくじを確認すると、互いに3番と書かれていた。

『えぇ!2人とも同じなんですか!いいなぁ』
「仁花ちゃん、よろしくね」
「はい!よろしくお願いしまふっ!」

仁花ちゃん、緊張してるんだなぁ。

「名前ちゃんは何番?」

潔子先輩に言われて我に返った。そうだ!私のペアを探さないと!

『8番です!』

なるべく聞こえるように大きな声で言う。周りはほとんどペアが出来上がっている。

「8番?」

私の声を聞いたであろう赤葦さんがこちらにやってきた。

『はい、赤葦さんも8番ですか?』
「俺も8番。よろしく」

良かったぁー、ペアが見つかりました!!しかもお相手は赤葦さんという頼りになりすぎる人でした。


***
side 赤葦

これは偶然だがラッキーだ。まさか名前と同じペアになることが出来るとは。

ほんの少し期待していたが、本当に叶ってしまった。あとで黒尾さんや木兎さんに恨まれるのはこの際気にしないでおこう。

早速肝試しのコースを歩いていると、彼女が全くもってビクビクしていないことに気づく。意外だった。

女子は大抵お化け屋敷や肝試しの類に弱いと思っていたからだ。

なんだかつまらない。俺はいつの間にか悪戯心が手伝って、驚かそうという気持ちになっていた。

夜は冷える。それに伴い俺の手もひんやりとしている。これを使わない手はないと思い、その手を彼女の首もとに持って行く。

『ひゃあああ!!!』

手と首が重なった瞬間、彼女は悲鳴に近い声をあげた。驚かせようとは思ったがここまで本格的に驚かれると、申し訳ない気持ちになってくる。

「ごめん、つい出来心で……」

心配になって顔を覗くと、彼女はこちらをキッと睨んでいる。しかしぜんぜん怖くない。

『怖かったです〜!』

俺の胸板をガシガシ叩いて反抗する。

『もう知らないです!』

彼女が怒ってそっぽを向いてしまった。確かに怖がっている様子がない彼女に、つい追い打ちをかけるように脅かした俺も悪いが、そこまで気分を害するとは思わなかった。

そもそも怒るところを初めてみた。ちゃんと感情の起伏があって、表情が変わって。一緒にいて楽しい。

「本当にごめん、まさかそんなに怖がるとは思わなかったから」
『……』

彼女は背中を向けたまま。どんな表情かを見ることができない。

『…ふっ、ふふ』
「!」

そして急に押し殺したような笑い声が聞こえてきた。

『私こそ、ごめんなさい。本当は全然怒ってないです。赤葦さんがどういう反応をするか見てみたくなったんです』

彼女は笑った。その笑みが今は小悪魔に見えた。しかし彼女からしてみれば、そんなつもりは一切ないのだろう。

やられた。いつも反応を見て楽しんでいたが、逆に反応を楽しまれるなんて。

彼女は本当に何をしでかすか分からない。だから、一緒にいたいと思うのかもしれない。

この2人だけの時間がもう少し長く続けばいいのに。

木兎さんや黒尾さん、それに烏野の皆には悪いが、今だけ名前を独占させてもらおう。

『赤葦さん、もう少しで折り返し地点ですよ!行きましょう〜!』

そんな俺の思惑を知らない純粋な彼女を、愛しいと思った。

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