東京組
先に出発していた烏野の軍団はすでに東京に到着していた。
「オォッあれはっ、あれはもしやスカイツリー!!?」
「いや、あれは普通の鉄塔だね」
「ぶっひゃひゃひゃひゃひゃ」
東京にたどり着いた一行は、音駒の選手に先導してもらい、目的地に向かっていた。興奮した田中と西谷は田舎っぺ丸出しのハシャギぷりで、あちこちを駆け回る。そして、三年生である東峰は、その二人を元気だなぁとほのぼの見守っていた。
「……ていうかオイ」
「…!?」
「なんか人足んなくねーか」
あちらの雰囲気とは違って、落ち着いた雰囲気の澤村に、黒尾が思い出したように話しかける。
「実は、この前のテストで日向と影山が赤点を取っちまって、それで今は補習を…」
「え、じゃああの超人コンビ今頃補習受けてんの」
「ああ…まぁでも…」
「うおおお!!?」
「「!!?」」
突如として聞こえた奇声に驚き、澤村が言いかけた言葉を飲み込んだ。その声を発した人物など黒尾には分かっていた。
「じょっ…じょっ…!女子が増えとる…!!!」
「見たか虎よ…、これが烏野の本気なのです」
「くっ…眩しい!」
そう山本武虎である。山本は驚きを隠そうともせず、声を上げた。そして、田中はその山本の様子を見て満足げに合掌している。
「烏野のマネって…増えたのか?」
「まぁ、一応」
「って事はもう一人いないような。あの小さくて、ふわふわしてる…」
「苗字の事ですか」
「そうそう。名前チャン」
黒尾にはどうしても気になってしまった。宮城に合宿しに行った時のあのふわふわした女子の存在を。それは何故かと考えた時に思いついたのは、彼女がアホっぽかった事が要因だと考えられる。もちろんいい意味で、だ。これから育てる甲斐のある彼女。黒尾にとっては、どういう風に成長するのか見守りたい庇護欲の湧く女子だった。
「苗字なら、日向と影山と一緒に遅れて来るはず」
「……だってよ、良かったな犬岡」
「キャ、ャップテン!やめてくださいっス!」
「素直になれよ〜」
そこで犬岡に態とらしく話をふる。犬岡の名前に対する気持ちを知っているからだろう。黒尾も随分いい性格をしている。
「クロだって、嬉しいクセにね…」
そう研磨がボソと呟いた言葉は、隣にいた人物にさえ聞こえないような小さな声だった。
ずっと一緒に過ごしてきたからこそ分かる、誰にも言わない黒尾の気持ちに、研磨は薄々気づいていた。それと同時に、一番素直になっていないのは誰だよ、と心の中で思ったのだった。