音駒に見覚えのない選手が加入していた。
それも巨人中の巨人だ。あんな所から見下ろされたら堪ったもんじゃないです。
はい、怖いです。それにロシアと日本のハーフと聞いたから、日本語がどこまで通用するか分からない。私、英語はあまりできないんだよなぁ。ましてやロシア語なんて挨拶くらいしか分からない。
だからその威圧感に触れないように、近づかないと決めていたのに…。
その日の夜に早速出会ってしまった。
私は、飲み物を買うために近くの自動販売機に赴いた時、その巨人の彼を遠くに発見した。相手の目的はまだ分からない。ただ歩いてこちらに向かっている彼の姿を発見したので、いち早く危険を察知した。
その前に知り合いでも何でもないんだから声を掛けられるハズがないか。ちょっと隣を通るだけじゃないか。そこを我慢すればきっと何とかなるはず。
そう思って少しの間固まっていたら、彼は私の後ろで止まった。えぇ!もしかして自動販売機に用事ですか!?ちょっと焦った。
は、はやく飲み物を買って退けないと…!その考えばかりが先行して、手元が狂う。押したかったのはスポドリだったんだけど、間違えてお茶を押してしまった。お茶は好きだけど今はそんな気分じゃなかったんだよなぁぁぁ。
「なぁ」
あぁー、失敗した。でも買ってしまったものは仕方がない。潔く諦め……、
「なぁってば!」
『は、はい!』
気づけば、彼に呼び止められていた。
「お前、今日遅れてきた奴だろ?」
『は、はい…』
「ってことは烏野か」
『は、は、はい、そうです』
何故ゆえ話しかけられたのか。それはもう疑問でしかなかった。まさか規則とか礼儀とかそういうのには厳しくて、遅れてきたのが許せないとか!?そこを突かれてしまったら何も言い返せない。
「お前、名前は?」
『私は苗字名前です!』
「名前……、名前…、あ、よく犬岡が名前を口にする奴か」
犬岡君…、そっちでも私の話してくれているんだ…。なんか嬉しいなぁ。
「俺、灰羽リエーフ」
『灰羽……、リエーフ君?』
「リエーフでいいよ!」
『リエーフ……、やっぱりリエーフ君じゃ駄目かな?』
「あー、どっちでもいいけど」
って、あれ…?さっきから全然気づかなかったけど。
『リエーフ君日本語!?』
「え、そうだけど」
『すごい流暢なんだねぇ!!』
ものすごい勉強したとか?意外や意外にも勉強家だったり?
「いや、俺日本生まれ日本育ちだから」
ここで今日、疑問が一つ解決しました。彼はいかにも外国人な風貌をしているが、実は日本生まれ日本育ちの日本男児のようです。