昨日お話ししたリエーフ君は、試合ではとても活発だった。
長身を活かした鞭みたいなスパイク。どんなにブロックがいたとしても、その長身を存分に活用して、ブロックの上からスパイクを放つ。やっぱり身長が高いと有利だなと改めて思った。思わざるを得なかった。
そしてスパイクを打つリエーフ君は何より楽しそう。ずぶの素人の私が見ても分かるくらいレシーブとかはまだまだ発展途上だけど、これからの成長が楽しみな選手だ。
リエーフ君だけではない。音駒は目に見える進化を遂げている。他の高校も凄まじい強さだ。
では烏野はどうだろう。成長はしているが、“進化”と言えるほどの大きな変化はまだない。まだまだ進化途中と言えるだろう。
だが進化の片鱗はある。
音駒との試合中。
翔陽君はスパイクを打つ時、物凄い威圧感でアサヒ先輩のボールを奪おうとしていた。
危ないプレーではあったけど、私はそれを悪い行動だとはこれっぽっちも思わなかった。
勝利への執着心。ボールへの固執。俺がスパイクを打つんだという欲。
ボールを打つために飛んだ翔陽君が眩しかった。
そして翔陽君は言った。
「おれ、目ぇ瞑んのやめる」
翔陽君は翔陽君なりに考えていたけど、
「ミスるとわかってる奴にトス上げるつもりは無え」
厳しいことを言うようだが、飛雄君のいうことにも一理ある。好奇心のある翔陽君だって、正論を言う飛雄君だってどちらも正しいように感じる。私はいつでも中立の立場にいて、争いを避けたいという曖昧な人間だ。そのことにイラつく人もいるだろう。八方美人と言われかねない、ハッキリとしない人間。
でも、ここは私が口出しするような所じゃない。それくらい分かっているつもり。
2人のピリピリした空気に、今のままじゃダメだという緊張感が、チームを追い詰める。いい意味でも悪い意味でも。
そんなチームの緊張感に、潔子先輩も仁花ちゃんも薄々気が付いている。見ているこっちにまで伝わってくる感情に呑み込まれてはいけない。
そしてさっきの二人の会話によって、試合での翔陽君と飛雄君がギクシャクし始めた。肝心の二人が機能しないと、始まらないのに。
私は一体どうしたらいいんだろう。
何もできない自分が悔しい。私が何を言ったところで2人が仲直りするとも限らない。こんな悔しい思いを抱えているのは何も私だけではない。
澤村先輩も、菅原先輩もアサヒ先輩も、みんな2人の行く末を見守っている。もちろんチームだから誰一人欠けても意味がない。それでも、翔陽君と飛雄君の関係が修復しなければ烏野の未来はないと言ってもいい。
もし全国を目指すなら、何としてでも和解させなければならない。
明暗は二人に託された。