ひよこが駆け巡る!





試合が終了した。烏野高校は、次は休憩のルーティンだ。そして、試合が終わるのと同時に翔陽君と飛雄君は試合の後、体育館の外に出て行った。二人を纏う雰囲気は並々ではない。それを追う形で菅原先輩も外に出て行く。烏養コーチも出て行った2人を気にしているようだ。

ここは私の出る幕ではない。私が言ってしまえば余計なお世話になるし、いらないことしか言えないから。

私は、気を紛らわせるように他のチームの試合を観察してみた。

サーブこそが究極の"攻め"という生川高校。

コンビネーションの匠、森然高校。

そして若利君同様に全国五本の指に入るであろう、"全国"を戦う大エース擁する梟谷学園。

各々の学校が豪華すぎてたまげた。間近で見ると迫力がすごいなぁ……。

そんな事を思いながら見ていると、物凄い勢いでボールが飛んできた。誰かが打ったスパイクだろう。普段の練習でもよくある事だから、適当に流せばいいと思ってたんだけど、思いの外そのボールは顔面を直撃した。ボールが地味にカーブしてきた。そして顔全体がジーンとする。

『ふげっ!』

おまけに変な声まで出る始末だ。それにしても……いったい…!鼻が…鼻もげたかも…。あれ?飛んで行った!?私は急いで鼻があることを確認する。あったー。でも鼻が暖かい。これはもしや…!

「すまん、大丈夫かー!」

鼻のあたりをさわさわしていると、声が近づいてきた。謝るってことはスパイクを打ってきた人だろう。

『はい、すみません。…上手く避けられなくって』
「木兎さんのスパイク痛いですからね」


木兎さん…?って人だけではなくもう一人来た。このユニホームは確か…梟谷学園の選手の方?2人の大きい人に囲まれた。初対面である

「本当にすまんすま……って鼻血!鼻血出てるぞ!」
『……え!』
「木兎さん、うるさいです…」

やっぱり鼻血ぃ!私は急いでポケットからティッシュを取り出す。さっき鼻が暖かかったのはこれのせいだ。なんともお見苦しいところを…。人様の前で鼻血を出したのは初めてだ。

『あ、あの…!鼻血!ボールに血はついてませんよね!?』
「ボールよりも自分のことを心配しろ!ちなみにボールは大丈夫だ!!」

良かった、皆さんが使うボールに私の鼻血がついたら大変だ。きっと不快な思いをさせてしまう。

これは誰の血だ!と騒動が勃発するかもしれない。

「えっと烏野の…名前はなんだ?」
『苗字名前です!』
「おーそうか!マジで悪かったな。痛くなかったか?」
「スパイクが顔面に当たって痛くないわけないじゃないですか」
「何!!!ほんとか!!」

物凄い剣幕で聞かれるものだから、一瞬怯んでしまった。確かに痛かったが、大事にはいたらなかった。

『私は大丈夫です!練習試合止めてしまってごめんなさい』
「そうかー?じゃ、本当に悪かったな!何かあったらすぐ言ってくれよ!」

梟谷の元気な人…、そして全力で私を心配してくれる優しい人だ。あとその隣にいた落ち着いた雰囲気の黒髪の人もとても優しかった。

雰囲気からして先輩だろうか。二人ともコートに戻っていったから正式なメンバーなのだろう。

私は鼻にティッシュを詰めながら、その梟谷の試合を観察する。

元気な人は雄叫びを上げながら何度もスパイクを決めていく。見ていてとても気持ちがいい。

そのスパイクをうつ前にボールをあげているのが黒髪の人だ。息がぴったりで、試合の主導権を握っている。ばっちりなコンビネーションだ。

今の翔陽君と飛雄君にはない信頼関係に息をのんだ。

あんなに嬉しそうに、楽しそうにバレーをする人はなかなかいない。そして見ている側が爽快感を得られる不思議なチームだ。

私は他のチームの試合を見つつも、梟谷の試合を主に見ていた。目を離せなかった、先ほどの2人から。

試合が終わる頃には鼻血もすっかり止まっていた。
前の試合が終わったため、いよいよ烏野の出番がやってくる。

翔陽君と飛雄君はちゃんと仲直りできたのかな…?

前 |103/226| 次