どこからどう見ても二人の仲が悪い。2人とは言わずもがな翔陽君と飛雄君である。
目に見えてわかるピリピリ加減。私にはどうする事も出来ずに今に至ります。
非常に……苦しいです!
あぁ、もうどうしたらいいんだろう。
私がどうこうする前に、2人自身の力で解決するべきなんだろうけど、でもこの2人の険悪な雰囲気が、周りに影響を及ぼさないとは限らない。見守ると決めた後でも、さすがにこの雰囲気はどうにかしなければならないと思う。
飛雄君に話しかけると、いつもよりそっけない返答がくる。私と喧嘩したわけでもないのに、どうも飛雄君に怒られている感じがして嫌だ。
「名前ちゃん」
『…はい!?』
「ボール出してくれない?」
『うん、私でよければ!』
こういう時に一番に沈黙を破るのは翔陽君だ。
私は言われた通りにボールをふわりと山なりに上げると、翔陽君は目にも留まらぬ速さでスパイクを打った。相変わらずすばしっこい動きに、見ている私が動きにつられそうになる。
「あー、えっと…、そこのちびっ子二人。そろそろ飯だぞ」
この声は何度か聞いたことがある。確か…、黒尾さん?それよりもなんだか心外な言葉が聞こえた気がするのですが。
『ちびっ子ですか!?』
「ち、ちび…!」
「どっからどう見てもちびっ子だろ、お前ら」
「くっそぉおおお、めしーーー!」
翔陽君はチビと言われたことに悔しそうにしながらも、空腹には勝てなかったらしく、風の如く食堂に向かって走っていった。
翔陽君が行ったのを見守ってから、黒尾さんは歩みを進めて、私の前で立ち止まった。そしてお決まりのように頭の上に手を置いてくしゃりと撫で始めた。されるがままに撫でられていると、
「撫でられんの好きだろ」
『……はい』
「素直でよろしい」
何故こんなにも撫でられるのが好きなのだろう。前世は犬か何かだろうか。撫でられている時は、心地よさと気持ちよさを感じながら、つい目を細めてしまう。
「ほら、飯の時間だ。行こうぜ」
仕上げとでも言うように、ポンポンと二回手を上下にさせて、撫でてくれた。
『はい!行きます』
ご飯の時間はとても楽しみだ。空腹も満たされるし、雑談もできる。
選手たちはこの時間で、体力を回復したり、ぶちぶちに切れてしまった筋繊維の修復を促すために沢山ご飯を食べる。
それと同時に、他校の情報収集や、優秀な選手にアドバイスを求めることができるし、とても有意義な時間を過ごすことができる、束の間の休息である。
私は、ご飯の時のざわざわとした空間がなんとなく好きだ。今日もきっと楽しい食事時間になると信じて、黒尾さんとともに食堂に向かった。