ひよこが駆け巡る!





徹………って。まさか、あの?

「ア゛ッ?」
「ゲッ!!!」
『え…!』

予想通り、青城のお兄ちゃんこと及川さんでした。相変わらずのイケメンさんです…!眩しいです!ただ、飛雄君と会うときだけ、妙にいやな顔をするのはなぜだろうか。

「及川さん」
「飛雄!!!」
『お、おに、おに、いちゃん!』

私は、最後に及川さんに会った時、”次はお兄ちゃんでヨロシク”的なことを言っていたのを思い出したので、戸惑いながらもその言葉を口にした。いつまでも言い慣れない。年上の先輩をお兄ちゃんなんて言うとなんだか恥ずかしい。確かにお兄ちゃんは欲しかったけれども!

「お、ヒヨコちゃん!?」
「徹、女の友達いたのかー?珍しー」
「そりゃいるよ!だから呼び捨てやめようか!」

思わぬところでの遭遇です。隣にいる少年は弟だろうか。随分年の離れた兄弟に見える。

「いやー、まさかこんな所でヒヨコチャンに会えるなんて」
「…及川さん、何をしてるんスか」
「甥っ子の付き添い」

なるほど、甥っ子さんか。

及川さん、飛雄君との間にピリピリとした雰囲気は未だ変わらない。どちらかというと及川さんが一方的に飛雄君を敵視しているように見える。2人はピリピリしているけど、及川さんの甥っ子さんはポカンとした顔をしている。2人が何やら話し始めたので、私は少しだけ話しかけてみることにした。

「オス!」
『こんにちは!…えっと何君かな?』
「猛!お前は?」
『私は名前って言います』
「…名前?」
『うん、宜しくね』

猛君とやらと視線を合わせるためにしゃがむと、猛君は「名前は小せえな」と言われた。え、しゃがんでるから小さく見えるとかじゃなく?及川さんと飛雄君に囲まれてたら小さく見えるのは当然と言ったら当然か。

『で、でも、猛君よりは大きいよ!』
「でも絶対俺、すぐに身長越すぜ」

『そりゃ男の子だもん!』
「こーら、猛。ひよこチャンが困ってるでしょ!」

及川さんは私の肩を自分の方に寄せて、猛君に注意していた。飛雄君との話は終わったらしい。

「別に困ってねーじゃん」
「もうなにこの子!」

及川さんでさえ手に負えない甥っ子さんらしい。このくらいの年頃は生意気なくらいが可愛げがあるってもんだ。と、そう言えば…

『あの、そろそろ離してくれませんか…』
「えぇー、どうしようかな」

及川さんに助けてもらったはいいけど、さっきからずっと肩に手が置いてある。嫌ではないんですけど、心臓が持ちません……!イケメンさんの耐性がないので。

「及川さん、名前が困ってるんで離してやってください」

あぁ、いつもあなたに助けられるね。今度は飛雄君に勢いよく手首を掴まれた。あれ、前にこのセリフを聞いたのも確か及川さん関連だったような。


前に出て騎士のように庇ってくれた飛雄君の背中は、真っ直ぐで逞しかった。やっぱりこの背中は特別に好きだ。


「そんな必死になってー。ちゃっかり呼び捨てしてるし、飛雄はまさかヒヨコちゃんの事好きなわけー?」

及川さん、そこは煽っちゃダメです。そんなこと言われて答えられるような飛雄君ではありません…!

自惚れているのかもしれないけど、嫌われてはいないだろう。だけど好きかどうかで聞かれればどうなんだろう。気になって、少しずつ前に出て飛雄君の顔を覗き込んでみると、


『飛雄く……!』
「………。」

大変です。

飛雄君が立ったまま硬直しております。微動だにしません……!
そんなに嫌な質問だったんでしょうか。

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