ひよこが駆け巡る!





「そんな必死になってー。ちゃっかり呼び捨てしてるし、飛雄はまさかヒヨコちゃんの事好きなわけー?」

及川さんの煽りともとれるそのセリフに硬直してしまった飛雄君。

……うぅ、ごめんよ飛雄君。飛雄君はいつも私をカバーしてくれるのに、私ときたら、まともなフォローをしてあげられない。


「徹こそ名前が好きだからそんなにムキになってんのか?」
「ハ、ハァ、何言ってんの!?まず猛は黙ってなさい!」


いいタイミング(?)で猛君が割り込んできた。グッジョブだよ!

「だって、よく家でヒヨコの話してんじゃん。ヒヨコって名前の事だろ」
「あー、もう!なんなのこの子。全然可愛くない!」

ちょっと嬉しい言葉も聞こえてきた気がするけど、いい感じに及川さんと猛君が言い合っている間に、なんとかして飛雄君を呼び戻してあげないと!


『飛雄君、あ、あの…、えっとね。無理に好き、とか嫌いとか返事しなくていいから…!及川さんったら突然凄いこと言いだすよね〜…あはは』
「……嫌いなわけねぇだろ」

そっか、……嫌いじゃない、ですか…。……ひえぇぇぇえええ!ふぃぃぃ…!え?

『そ、それはどういう』
「るせー、そんままの意味だ、ボケェ!」
『いでっ!』

照れ隠しからか、飛雄君は私のおでこに思いきりデコピンをした。

うぅ………。嬉しぃぃいぃ…!けど…、嬉しすぎて頭が…、混乱しています。

嫌いじゃないと言った飛雄君の顔は真っ赤で、とても嘘をついているようには見えなかった。しかも、飛雄君は嘘をつくのが苦手な人だ。きっと本心で言ってくれている言葉なんだろう。なんだか、気持ちが落ち着かない。

出会ったばかりのころは、飛雄君に嫌われていると思っていた。しかし、一緒に過ごして、言葉を交わしていくうちに、嫌われてはいないだろうと思うようになってきた。今、こうしてそのことを言葉にして言ってくれて、私の気持ちはこれ以上ないくらい高揚していた。

「飛雄!女の子はもっと大切に扱いなさい!」

猛君との言い争いに終止符がついたらしい及川さんが、声を荒げた。

「及川さん、今日はありがとうございました。それでは失礼します」
「え、なに。無視?」
『うわっ!』

飛雄君に手首を掴まれて、引っ張られる。飛雄君は顔をリンゴのように真っ赤にしたまま、持ち前の腕力で私を引き摺っていく。

『お、おいか……お兄ちゃん、今日はありがとうございました!』

飛雄君にアドバイスをくれたお礼を言うと、及川さんはぽかんとした顔で、猛君につつかれていた。

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