『飛雄君………?』
飛雄君に腕を掴まれたまま、何も言わずにさっきの会場を離れていく。
飛雄君の足が長いため、一歩のストライドが長くなり、同じ歩数を踏んでも私は彼には追いつかない。必死に小走りしてついて行くから、ちょっと焦りを感じてきた。このまま行けば私の体力がなくなってしまう。
『飛雄君!』
今度は力強く呼びかけると、やっと立ち止まってくれた。
「…………。」
『あのね、嫌いじゃないって言ってくれて嬉しかったよ?』
言っているこっちまで恥ずかしかった。が、まぎれもない本音である。飛雄君は、きっと恥を忍んで言ってくれたわけだし、私も少しくらい我慢しなければフェアじゃない。
『私も、飛雄君のこと嫌いじゃないし、寧ろ大好きだよ!』
あぁ、ついに言ってしまった。恥ずかしさが限界だぁ。
「……………。」
『……………。』
お母さん、私すごく気まずいよ。助けて…………!
『ははは〜、あの急にごめんね。でも本音だから!嘘ついてないから!』
どうにでもなれ精神で思ったことを口にすることにした。恥ずかしさは一周回ったらこうなるのね。でも、誰でもいいから助けて欲しい…。
「……好きだとかよく分んねぇけど、お前が傍にいねぇと……なんか嫌だ。」
目線をずらして頬をかきながら、でも手は離さずにそう言ってくれた。
『そっか、ありがとう』
私も飛雄君がそばにいてくれると安心する。ホッとして体を緩ませると、自然と笑みがこぼれた。
『そういえば飛雄君。これからどこに行くの?』
「学校。体育館の点検終わってたら、自主練する」
さっそく練習というわけか。さすがバレーバカ。飛雄君らしいといえばらしい。
そしてまた歩き出そうとすると、何処からともなくヴーヴーと着信音が聞こえてきた。
『携帯…?』
「あぁ俺のか」
影山君はカバンをゴソゴソし始め、携帯を探り当てた。そして通話ボタンを押した。
「ハイ、もしも」
<<影山!!今どこにいる!?>>
「?烏養さん?」
通話相手は烏養コーチらしい。電話の様子から少し焦ったような大きな声が聞こえてきた。
<<番号は澤村に聞いた!>>
「今学校に向かう途中ですけど」
<<なんだとっ!?>>
「体育館の点検おわってねーかなと思って…」
「あ"!」
<<あ"!>>
電話の音と現実の音が一致した時、後ろからドドドドドドドっと何かが迫ってくる音がした。
「影山ァァァァ!!!」
『う!?』
「うぉ!?」
烏養コーチの強烈にでかい声が聞こえてきた。
「通り過ぎるな!!!置いて来い!!!」
「ハイ!?」
「止まるトスだ!!」
烏養コーチは飛雄君の肩を鷲掴みにして、興奮したように大声で叫んだ。
***
それから烏養コーチのお店で飛雄君と烏養監督は話し始めた。私も一緒になって話を聞くが、専門用語ばかりでなんだか難しい。しかし飛雄君には良く分かっているようだ。
そして話し終わった時、飛雄君は
「…やってみせます」
そう言って立ち上がった。
「苗字、悪いが影山に付きあってやってくれないか」
『はい、もちろんです!』
私に出来ることならなんのその!なんでもこなしてみせますとも!