影山side
名前に連れられて行ったちびっこバレーボール教室で、及川さんとバッタリ出会った。
まさかこんな所で会うとは思っていなかったからか、表情が強張った。しかし、これはただの偶然じゃないだろう。そう思って、多少嫌ではあったが、宮城1のセッターとして呼び声の高い及川さんのアドバイスをもらうには絶好の機会だった。俺は、必死に頼み込んで何かしらのヒントをもらうことができた。
そして、及川さんと話し終えると、名前と及川さんの甥が話しているところを見つけた。名前のが甥の身長に合わせて屈んで、目を見て話している姿を見て、子供が好きなんだと分かった。
そして甥と話していた時、及川さんの両手があいつの肩に置かれていた。その及川さんの手が名前の肩に置いてあるのが嫌で、咄嗟に庇いに入った。今考えれば名前が困っていたから助けに入ったんじゃねぇ、俺自身が嫌だったから庇ったんだ。
そして、あいつのことが好きなのかと聞かれた。正直愛だの恋だの、分からないことだらけだ。
少なからず、あいつに対しては嫌いだという感情はない。あの及川さんだって、気にくわないという思いはあるが嫌いではない。日向のことだって月島の事だって嫌いではない。いけ好かないと思うが、それだけだ。名前に対しても同じ気持ちを抱いていると思っていた。嫌いではない奴、ただそれだけだと思っていた。でも、違った。
誰か別の奴と話していればイラつく。俺の隣で笑っていると落ち着く。
普通以上の感情があることは確かだった。でも認めたくない。俺にはバレーがあればいい。バレーさえあれば生きていける。
そう思ったのに、…駄目だ。及川さんに気づかされるとは。及川さんにとっては些細な質問だったかは分からない。しかしその問いは、思った以上に俺の心に刺さってきた。
(『あのね、嫌いじゃないって言ってくれて嬉しかったよ?』)
(『そっか、ありがとう』)
名前の笑顔が蘇る。不意にも可愛いと思ってしまった。
もしこの気持ちが恋ならば、俺はずっと前から名前に好意を抱いていたことになる。
まさか気づく日が来るなんてな。自覚してしまったなら仕方がねぇ、多分俺の性格上、解決しねぇと落ち着かないままだ。
しかし今の関係で十分だと思っている。別に特別な関係は望んでねぇし、今の状況を掻き乱すつもりもねぇし。本当にこの気持ちが好意なのかも分からない。まだ関係を変えるには早すぎる。
ごちゃごちゃ考えるのは苦手だ。まずは目の前の事に集中していかねぇと、全部がうまくいかなくなる。
俺だって子供じゃねぇ。多分暫くしたらこの気持ちに整理がつくだろう。それまでは今までのままでいくべきだ。