ひよこが駆け巡る!





_第3体育館にて

今日も練習試合が終わった後、私は第3体育館で自主練のお手伝いをしていた。

「お、丁度いいところに」

黒尾さんはそう言って、体育館の入り口付近でニヤニヤしている。誰に話しかけているんだろう。そう思って黒尾さんの視線を辿ると、その先には月島君がいた。

私も話に混ざりたいと思って、体育館の入り口に行く。しかし前には黒尾さん、木兎さんがいて月島君の姿を見ることはできなかった。

「チョットそこの!烏野の!メガネの!ちょっとブロック跳んでくんない?」

木兎さんが元気に誘っている。しかし月島君がこういう誘いにのることはまずない。

「あっ、僕もう上がるので失礼しまーす」
「何!?」

案の定断りを入れた月島君。彼は常に低燃費だ。自主練をしているところなんて見たことがない。それが悪いとは言わない。

「ブロック無しでスパイク練習しても意味無いんだよー頼むよー」
「なんで僕なんですか。梟谷の人は………」
「木兎さんのスパイク練、際限無いから皆早々に逃げるんだよ」

今度は私の後ろから赤葦さんの声が聞こえてきた。

「俺はコイツ鍛えるのに忙しいんだよね」

黒尾さんはそう言ってリエーフ君を指差す。先ほどより若干復活したリエーフ君が、貞子のように地を這ってこちらに向かってくる。

「だからっ、俺がブロック跳びますってば!」

声もガラガラで、正直気力もなさそうだ。

「うるせえ、音駒でレギュラー入りたかったら、まずそれなりのレシーブ力つけろ」
「うぐぅ」

見ていて可哀想になるくらい扱かれているらしい。あとで飲み物をあげよう。

「…見えないかもしんないけど、コイツ全国で5本の指に入るくらいのスパイカーだから練習になると思うよ」
「…3本の指にはギリギリ入れないですかね」
「ドンマイ」
「落とすくらいならアゲないでください!!!」


なんだか漫才を見ているみたいで、思わず笑ってしまいそうになった。

しかし、あんなに素晴らしい木兎さんの上がいると言うのですか!果たしてそんな人がいるチームに、烏野は勝つことが出来るのでしょうか。

「それに、君MBならも少しブロック練習した方が良いんじゃない?」

少し月島君が揺らいでいる気がする。あと一息で付き合ってくれそうだ。

「それにお宅の名前チャンは練習付き合ってくれてんのにな〜」
「は?ヒヨコ?なんでいるわけ」
『ボール出しをしてたの!木兎さんのスパイク、近くで見るとすっごい迫力なんだよ!月島君もブロックして見れば分かると思うけど、驚いちゃうよ』

私が熱烈に凄いところを語っていると、月島君がため息を吐いてから体育館に入っていった。少しムキになっているように見える。

「名前チャン、グッジョブ!」
『何もしてませんよ〜』

何故だか褒められたが、これで一件落着!ムキになった月島君を見るのは、最初の試合形式の練習ぶりかもしれない。


『月島君、頑張れ』

心の声がそのまま音になる。小さな小さなその呟きは、周りの誰にも届かない。そう思っていたのに、声が届いたか分からないけど、前を歩いていた月島君が振り返って、私を見た。

「ヒヨコ、タオル持ってて」
『うん、いってらっしゃい!』

タオルをわざわざ渡しにきてくれた。

…月島君が少しでもバレーに対して前向きになっている。積極的にバレーに向き合う月島君のありのままの姿がそこにある。

その姿を見た私は自然に笑っていた。

前 |123/226| 次