『月島くーん。失礼しますー!』
ドアをノックしてから部屋に入る。返事を聞く前に入ると、月島君の姿が目に入ってきた。部屋に戻って荷物を漁っているようだった。
「は?なんで?」
『んーと、遊びに来たよ!あ、あとこれタオル返すね』
何て言ったらいいかわからなくて、動揺を見せないように誤魔化した。
「遊びに来たって、何もすることないんだけど」
てっきり帰れと言われると思っていたから意外だった。少しでも受け入れてくれていると思うと、少しでも月島君に近づけていると嬉しくなった。
『じゃあお話しよう』
「……めんどくさい」
『駄目?』
「…僕面白い話なんてできないけど」
『月島君は私の話聞いてくれるだけでいいよ』
月島君のそばに来て隣に座る。そしてこの合宿中に起こった出来事や、小さい頃の話などをしていく。月島君は適当に相打ちをしながらも話を聞いてくれているようだ。嫌がっている様子もないからついつい話し込んでしまう。すると、月島君は口を開き始めた。
「ヒヨコはさ、なんで僕に構うわけ」
表情を変えずに、淡々と質問を尋ねてくる。
『構ってるんじゃないよー。ただお話がしたいの』
「……僕と話してて楽しいの?」
こんな弱気な質問をしてくるなんて珍しい。やはり今日の月島君は月島君らしくない。
『楽しくなかったらこの部屋に来てないよ!私月島君の良いところたっくさん知ってるよ』
月島君を嫌いだと思ったことは一度もない。
『めんどくさがりながらもちゃんと話を聞いてくれるところとか、意外と負けず嫌いなところも、スタイルが良いところも、頭がいいところも、裏表がないとこも……』
「待って、それどんだけ出てくるの?そろそろいたたまれないからやめて欲しいんだけど」
『えぇ!まだまだいっぱいあるよ!あとはね〜』
「だからストップ。もう、…分かったから」
『分かってくれた?へへっ、良かった』
私がいかに月島君といることが好きかを語ると、ストップがかかった。私は、自分が褒められるのは恥ずかしいけど、褒めることは大の得意だ。寧ろ話し出したらすぐ人を褒めてしまう。悪いところを見つけるのは苦手だが、良いところを発見するのは得意中の得意。
「本当にヒヨコってよく分かんないよね。平気で僕の中にズケズケ入ってくるし」
『ちゃんとノックしたよ!』
「僕の心の中ってこと」
なんだか月島君が難しい話をし始めた。
「ヒヨコに翻弄されるのって腹たつ」
ボソリと呟いた言葉は、確実に私の耳へ届いた。これは謝ったほうがいいのだろうか。
「……でも、嫌じゃないからもっと腹たつ」
もっと小さく呟かれたその言葉は、さっきより大きくハッキリ聞こえた。この言葉によって更に受け入れてくれたと実感を持つことができた。