ひよこが駆け巡る!





『スイカ、如何ですかー』
「おぅ、名前ちゃん…!食べる!!」

余ったスイカを烏野の先輩方に届けに行く。そのスイカたちは、田中先輩が全部食べてくれたため、見事完売した。すると、黒尾さんがこちらに向かって歩いてくるのが見えた。

「あー…スマン。」

そして黒尾さんが澤村先輩に申し訳なさそうに話しかける。スイカに貪りついていた澤村先輩がふと顔を上げる。

「?なんだよ」

「…昨日お宅のメガネ君の機嫌損ねちゃったかもしんない」

「え?」

黒尾さんは昨日第三体育館であった出来事を省きながら説明した。その場には私もいた。


「へー!あの月島が成り行きとは言え、自主練に付き合ったのか」


月島君が自主練に付き合うということは、私から見ても珍しい。そもそも、一緒に自主練をする事自体全くないことだった。終わったから帰る。練習があるから行く。どうも機械的に日常を過ごしているとしか思えなかった。そこに自分の熱烈な意思はない。

「で、何か言ったの?」
「お宅のチビちゃんに負けちゃうよーって。挑発を…」
「?」
「!」
「確かに月島は日向に引け目を感じてるトコあるよな…」
『やっぱりそうなんですかね……』

月島君が翔陽君を上に見ていると思ったのは私だけではなかったらしい。

「あっ、ソレ関係あるかわかんないスけど、うちの姉ちゃんが……」

田中先輩が冴子お姉さんとの会話を思い出しながら、月島君の話をしていく。そこには予想もしなかった意外な家族関係があった。

「__えっ……小さな巨人と同じチームに月島の兄貴が!?」

初耳だ。月島君は自分のことを話したがる人ではない。家族の話なんて一度も聞いたことがない。長年一緒にいた山口君は知っているだろうか。

「あっ、でもわかんねーすよ??苗字が同じだけの別人かもしんねーし」

「おーい、そろそろ始まるぞー」
「!行くか」

そろそろ試合が始まる。その後の月島君にどうしても目がいってしまった。そもそも月島なんていう苗字は滅多にいない。十数年生きてきたけど、月島という苗字は初めて会った。まず血縁者であることは間違いないだろう。


そんな月島君は練習が終わると直ぐに帰ろうとする。淡々とした姿に勿体無いと思うメンバーは沢山いた。

せっかく身長を持っているのに。技術もあるのに。
そう周りに言われても、本人にやる気がないのなら、やっていても意味がない。

だけど、私にはどうしてもバレーが嫌いだとは思えない。そもそも嫌いだったらバレー部に入るはずがない。


だけど月島君に直接かける言葉が思いつかなくて、何も言えない。所詮私の力なんてその程度だ。
でもくよくよしている私より、明るい私の方が、安心できる場所なんじゃないかと思う。

前 |129/226| 次