ひよこが駆け巡る!





「ヘイ眼鏡君!今日もスパイク練習付き合わない?」


その日の練習終わり。木兎さんが嵐の如く月島君にお誘いをかける。全国区の大エースに話しかけられるなんてこと滅多にありえない。しかし、また自主練に付き合うとも思えない。


「!」
「すみません遠慮しときます」


やはり断りをいれた。ここは月島君の意志を尊重したい。

「黒尾ー」
「えー」
「まだ言ってねーよ!」

潔く諦めた木兎さんは、黒尾さんにだる絡みするが、反応がイマイチだ。


「なんで!?お前梟谷のエースの人と知り合い!?何で断んの!?もったいない!」
「うるさいな…。僕は君と違ってスタミナ馬鹿じゃないんだよ…」
『まぁまぁ落ち着いて〜』

翔陽君が、木兎さんに話しかけられていた月島君に興奮しながら話しかけている。翔陽君だって出来ることなら全国区のエース達と練習がしたいのだろう。しかし月島君はどんな時も態度を変えず、淡々と返事をする。

「なんだよ!なんなんだよ月島よォ〜」

月島君の態度に不満な翔陽君は、プンプンしながら山口君のいる方向へ歩いている。


「せっかく梟谷のエースの人が練習誘ってんのに断ってんの!信じらんね」
『月島君、昨日も誘われてたよ!』
「え、昨日も!?ますますずりぃ!俺だって一緒にやりてぇのに」
「えっ、梟谷の?エース!?凄いね!?」
「そうなんだよ!もったいねー」

怒りを露わにする翔陽君の表情が面白いと言ったら怒られるだろうか。


「…日向。あのさ。日向なら今のツッキーに何て言う?」

今度は山口君が話題を振る番だった。自信なさげに開かれた口は、表情を伴う。


「…その影山とか谷地さんの時みたいに」

翔陽君はいつだって誰かの心を動かしてきた。無意識に、それでいて大きく揺さぶった。私だってその1人だ。変化し続ける翔陽君を見ると、私も頑張らなければという気持ちにさせられる。


「何も言わないけど」
「!」
『………!』

衝撃の一言だった。翔陽君なら、傷ついた心を照らしてくれると思っていた。

「だって月島はバレーやりたいのかわかんねーもん。やりたくない奴にやろうぜって言っても仕方ないじゃん」

翔陽君はいつも無意識にその人の本質を見抜いている。心の中まで見透かしているみたいにズバリと言う。


「くっそー!あんな身長持ってるくせによーっ!俺があの身長だったらあんなコトやこんなコトするのに!!」
「ツッキーは…バレーは嫌いじゃない筈なんだよ。そうじゃなきゃ烏野に来ない」
「山口は?山口なら月島になんて言う?」

純粋な問いかけだった。だけど山口君の心にはグサッと刺さったんだと思う。衝撃的だという表情だった。まさか自分にこんな問いかけが来るとは思ってなかったんだろう。


「よし!まだ時間あるし練習してくる!」


返事がこないことを不思議に思ったのか、それとも早く練習がしたくて仕方なかったのかは分からないが、翔陽君は再び練習に戻っていった。

山口君と私だけの空間。

「苗字ちゃんは、…ツッキーになんて言う?」

山口君の頼りなさげな声に不安になる。

『私は月島君を信じたい。そもそもきっとこれは月島君の問題だから、私は口を出せないんじゃないかなぁ』
「…そっか」

『でもね、もし口を出すとしたら、"チームを信じて"って言いたい。まだ信じきれてない所があると思うの!』
「苗字ちゃんらしいね。…うん、ありがとう。」

私の答えに満足してくれたかは分からない。だけど、山口君は吹っ切れた顔をして、出入り口に歩いて行った。後は任せても良さそうだ。


「おー!名前ーー!スパイク練また手伝ってくれ!」
『はい!もちろんです!』

山口君の代わりに木兎さんの声が聞こえた。名前、いざ出陣いたします!

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