しっかりジャージを洗って戻ると、試合はもう終盤まで進んでいた。急いで潔子先輩の隣に腰を降ろす。試合は嬉しいことに、現時点では勝っている。ただ、いつ何時天変地異が起こるか分からない。一秒たりとも気を抜いていい試合なんてないのだ。
『ただいま戻りました』
「おかえり。ジャージありがとね」
『いえいえ、遅くなってすみません。試合、勝ってますね…!』
「そうだね、日向が復活してからみんな調子がいいみたい」
『そうみたいですね』
潔子先輩はスコアを書きながら返事をしてくれた。おっと、今潔子先輩はお忙しいのだ。話しかけるな私!先輩に余計な労力を使わせるんじゃない。
「ね〜、及川さんまだ出ないのかなぁ」
「バカ、ちゃんとウォーミングアップをしないとケガしちゃうんだから!」
「エーッ、それはだめ〜!」
及川さんとやらはここまで来ても人気である。一体どんな人なんでしょう。
さっき会ったイケメンさんの顔がふと過ったが、やっぱあの人が及川さんだろうか?良く考えてみれば、彼が着ていたジャージは青城バレー部が着ていたのと同じだった。
と、思い耽ていると試合は烏野のマッチポイントになっていた。これで決めれば私たちの勝ちだ。
全員の目線がコートに集中する。
とはいえ相手は県ベスト4なわけで、中々点数を入れることを許してはくれない。流石と言ったところだろうか。固唾を呑んで試合の行く末を見守っていると、相手が選手交代をした。
「及川さんがんばって〜〜」
語尾にハートマークをつけた女子たちの甘い声が一際大きく聞こえた。声を向けられた主は紛れもないさっきの爽やかイケメンさん。13のナンバリングを付けてコート上に入っていった。
『こんなタイミングでメンバーチェンジですか…。』
「多分、ピンチサーバーだよ」
潔子先輩の説明を聞きながら、及川さんのジャンプサーブを見つめる。及川さんはピシッと月島君の方を指差した。そして彼の放ったボールはなんと狙い通り月島君一直線で、コントロールだけではなく威力も半端ないサーブ。レシーブが苦手と見抜かれた月島君はその球を取ることが出来なかった。
『ヒェェェェェェ!』
見ているだけで痛々しくて、鳥肌が経った。今までこんなサーブを見たことがない。恐らく影山君よりも上。
『き、潔子先輩!今の、今の……!』
「まず落ち着いて、名前ちゃん」
驚きすぎて開いた口が塞がらなかった。潔子先輩によって宥められるんだけど、どうしても鳥肌は消えてくれなかった。
あんなすごいサーブを受けたら間違いなく私は失神してしまいます。